2話なら教師の登場は必須だと思いますっ!
俺はこの学校で1番人気のない自販機へ足を運んだ。
なぜかって? 人の目を気にしなくていいし、なによりスムーズに自販機で飲み物を買える。
そんな些細な理由で1番人気のない自販機を選んだ。
ちなみに、なぜその自販機が1番人気がないのかと言うと、校舎裏の端に設置されているから。
さらには飲み物の種類が少ないうえに、『何が出るかわからないボタン』という100円を無駄にするボタンまである。
大抵は古いコーヒーやらお茶が出るらしい。
ごく稀に、200円のエナジードリンクや300円のスムージーが出てくるらしい。
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「ん?」
目的の自販機に着いたが、どうやら先客がいるみたいだ。
「今日こそ、今日こそ出る! 出るハズなんだ! 信じろ、自分を信じろ!!」
………かなり気合いが入ってるご様子ですねー。
目の前にいる女性は、身長が高く、赤い髪のポニーテールでつり目が特徴的な美人だ。
スーツを着ていることから、おそらく教師であるのだが、自販機の前で気合いを入れているのが教師だと思うと、少々この学校が不安になる。
しかも言ってることがギャンブルをしている人のセリフみたいなんだよなぁ………
正直、近づきたくない。
しかし、ここまで来て何も買わないのもなぁ…………
仕方ない、買い終わるのを黙って待ってるか。
「私は負けない! 来い、奇跡よ!」
こんな自販機1つに奇跡を使ってもいいのだろうか。
奇跡の無駄使いだと思います先生っ!
あっ、押した…………なにが出てきたんだろう。
「っ!…………プリン、だと?」
「ふぐっ!」
先生が戦慄した顔で呟いた言葉を聞き、手元を見るとプリンが手に収まっていた。
その光景に笑いそうになり、堪えようと我慢したが、結局我慢しきれず変な声が漏れてしまった。
目の前の教師はようやく俺の存在に気がつき、睨みつけるように見てきた。
「……………」
「……………」
数秒目が合って、教師は無言で自販機から退いた。
俺は自販機に小銭を入れ、アイスコーヒーを押す。
アイスコーヒーは微糖が美味い、俺はそう思う。
アイスコーヒーを取り、俺は隣に設置されているベンチに座った。
その間、教師はずっと俺のことを睨み続けていた。
俺がコーヒーを飲み始めると、教師はまた自販機に小銭を入れて、『何が出てくるか分からないボタン』を押した。
「っ!…………ヨーグルト、だと?」
「ぐぅ!」
引き運の悪さに、笑いが溢れてくる。
コーヒーを口に含んでいなくてよかった。
俺は何も言えず、再びコーヒーを飲み始める。
教師は無言でベンチに、俺と少し離れた位置に座った。
…………なぜ俺はすぐにここを離れなかったのか、後悔している。
「……………お前は、買わないのか?」
「……………コーヒーの気分だったので」
「……………そうか」
「……………はい」
気を遣って話をかけてきてくれたが、少々気まずい。
だ、だれか助けてぇー!




