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[完結]ダンジョンができた世界で、屑スキル持ちの僕は異界人と仲良くなれました。  作者: 安ころもっち


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No.07 敵を引き寄せる妬み

本日二本更新、一本目。


 20階層を越えると、これまでチラホラとしか見かけなかった探索者の姿を頻繁に見かけるようになった。 その多くは豪華な装備に身を包んだ中堅の探索者たちであり、僕とリリアが通り過ぎるたびに、好奇と嫉妬の混じった視線が突き刺さる結果となった。


 僕は極力トラブルを避けるため、リリアを促し階層を上げる速度を早めた。


 最近ではスキルのオンとオフを、ある程度は意識的に制御できるようになっていたため、他の探索者が近くにいる時は、意識を集中してスキルをオフに切り替える。 そうすることで彼らの戦闘を邪魔せずに通り過ぎることが可能になったが、常に精神を研ぎ澄ませる作業は僕の体力を激しく削った。


 26階層に到達すると、石造りの回廊はさらに複雑に入り組み、出現する魔物のランクも一段階上がった。 これより先は石人形(ゴーレム)大目玉(ダークアイ)といった、物理耐性や魔法防御の高い魔物に苦慮する場面が増えるようだ。


 幸いなことに、この周辺には他の探索者の影はなく、落ち着いて修行ができそうだった。 一部の限られた最上級の探索者は40階層前後を探索していると聞いていたので、このあたりの階層ならしばらく修行に力を注げそうだと感じた。


 僕はリリアと共に、現れる魔物を一匹ずつ確実に処理しながら、自身の練度を高めていった。 だが、静寂が支配するその階層で、僕たちは再び命を狙われることになる。 それは魔物による襲撃ではなく、明確な殺意を持った人間による強襲だった。


 何かの気配を感じ、振り向いた僕。


「@&■$ギ¥〆★二△サ◆♀♂々レ〇※★!!!」


 それに気づいたのは三人の探索者。 彼らは意味不明な言語を叫びながら僕たちに向かって走り寄ってきた。


 先頭に立つのは、身長が190センチメートルを越える大柄な男だ。 明らかに日本人には見えない彫りの深い顔立ちを確認し、途端に恐怖が湧き出てくるが、今は立ち止まっている場合じゃないとリリアの手を引きながら駆け出した。


 艶消しの黒い全身鎧をまとい、背中には巨大な剣を背負っているその男は、ガシャガシャと音を立てながらも迫ってきていた。 その左隣には、短髪の金髪をなびかせる小柄な女、少し遅れて痩せた男も確認できた。


「△◆ノ♀$、々@¥〆★ク◇〇※! ♂&モ■ρ!」


 なおも何かを叫び続ける三人から逃れるため、僕はダメ元でスキルの効果範囲を狭めるよう意識しながら、敢えて魔物達の横を通り過ぎるように移動を繰り返した。 途中で銃声のような物まで聞こえ、悲鳴を上げながらの逃走。


 必死に足を動かしながら次の階層への階段を目指す。 その傍には転移陣があるはずだ。 そして、広い通路に出た僕たち。


「サトウ! あれ見て!」


 周りを見回したリリアが叫び、指差した通路の先を確認する。 石人形(ゴーレム)の群れが見えた。


「リリア、行こう!」


 僕はリリアの手を引き、石人形(ゴーレム)の群れを横を通り過ぎる。 僕のそばで急に動きの悪くなった石人形(ゴーレム)の振り回した拳が、眼前を横切り悲鳴を漏らす。 背後から追跡者の叫び声が聞こえるが、振り返らずに目の前の石人形(ゴーレム)に集中する。


 なぜこんな目に会わなきゃならないのか……そう考えた後に首を振る。 僕は、彼女に出会えたから人生を変えられたのだ。 将来に不安を感じ、でも何もすることができなかった僕に、彼女は希望をくれたのだ。


 もし彼らの標的が僕だったとして、僕が死ねば、彼女にも危険が及ぶのだろう。 そんなこと、あってはならない。 僕はそんなことを考えながら、心を落ち着け意識を集中し、効果が出ていると感じたスキル範囲の調整を試しながら、魔物の群れを突き切った。


 スキルの効果により弱体化する石人形(ゴーレム)の拳を避け、背後にいた大目玉(ダークアイ)の触手をかわす。 リリアは僕の手を握りながらも、素早い動きでそれらをかわし、楽しそうな笑顔で僕に追随していた。


 しばらく逃げ続け、やっとの思いで26階層への階段と、その横にある転移陣のある小部屋にたどり着いた。 それに飛び乗る僕たちは、魔力を込め陣を発動させる。 眩い光に包まれ、次の瞬間、僕たちは塔の入り口へと帰還した。


 僕は安堵のため息をつきながら、塔の外で待機しているはずの源ちゃんの元へと全力で駆け出した。 その様子を見た源ちゃんたちは、慌てながら僕達の元へとやってきた。


「どうした、何があった!」


 僕は息を切らしながら、25階層で遭遇した三人組の特徴と状況を報告した。 彼らが叫んでいた言葉や、その装備などを伝えると、源ちゃんはすぐにスマホでどこかと連絡を取っていた。


「特定した。 A国からの入国者だ。 A国が探索者を雇ったのか、それとも元々そのつもりで送り込んだのか、まあそれは奴らに吐かせればよいだろう。 後はこちらで対処しておくが、二人は今後も警戒をして欲しい」


 そんなやり取りの後、僕たちは一度戻ると、リリアとゲームを楽しみ、気を紛らわせていた。 コントローラーを持つ手は震えていたが、隣で楽しそうにはしゃぐリリアを見て、少しづつだが心が落ち着くのを感じた。


 それから数日。 落ち着いたと判断された僕たちは、警戒を強めながらも塔の攻略を再開した。


 政府はあの後すぐに対応に動いたようで、待ち構えていた特殊部隊が塔から出てきた三人組を捕縛。 聞き取りの後、A国の大使を呼び出して徹底抗議を行ったそうだ。 さらに日本政府は、このようなことのある国からは探索許可を出さないと公式に発表したが、今後もこう言ったことは起こり得るだろうと、そう思っていた。


 源ちゃんからは、水面下で塔の権利を巡る国家間の争いがあり、そして、手中にできないのであればリリアを消し、塔を消失させればよい。 そんな考えを持つ国もあるようだと聞いた。


 改めて自分の無力さを痛感し、今回はたまたま運良く逃げ切れたが、次も同じようにいくとは限らないなと痛感する。 やはり強くなることでしか、この状況から逃れる道は無いのだろう。


 僕は握りしめた拳の震えを抑え、決意を新たにした。


日本を陥れようとするA国は、どこにもありませんよ? 架空のお話です。


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