553 港 町 4
「「「「…………」」」」
愕然。
呆然。
そんな顔をして固まっている、対戦相手の男性パーティ。
それは、ショックであろう。
中堅Cランクパーティとしてそれなりの自負があったはずなのに、全ギルド職員、そして多くのハンター達の前で、ど新人の小娘パーティに瞬殺された。
普通であれば、心が折れて再起不能になってもおかしくはない。
「……どう思う?」
「普通ですね……」
「普通だわね……」
「でも、まだ分かりませんよ。もう少し続けましょう」
小声でそんなことを言いながら、再び戦闘開始の位置につく、『赤き誓い』。
勿論、男性パーティも、こんなところでやめるわけにはいかない。
「……油断した。思ったよりやるようだ、次は、威力以外は手加減なし、本気でやるぞ。
対人戦闘パターン6、二度の不覚は許されない。いいな?」
「「「おうっ!!」」」
そして開始位置につく、対戦相手の4人。
再びギルドマスターの声が響いた。
「レディ……、ファイッ!!」
ぎぃん! きぃん、がつ、ばしっ!
がつ、きぃん、ばきっ!!
どごん!
ばしゅん!
ぱしゅん!
剣は弾かれ、受け流され、折られた。
……刃引きの模擬剣とはいえ、鉄製である。
そして攻撃魔法は迎撃され、おそらくわざと通して受けたであろうものは、命中寸前に何かによって弾かれ、無効化された。
「「「「…………」」」」
無言で立ち尽くす、4人の対戦相手。
「「「「「「…………」」」」」」
静まり返った、見物席。
「「「「「「なんじゃ、そりゃあああああ~~!!」」」」」」
そして、繰り返される、絶叫。
Cランク中位のハンターが、瞬殺。
そんなことができるのは、Cランク上位、それも、間もなくBランクに届こうかというあたりからである。とても、未成年者ふたり(レーナもそう見られていた)を含む、10代の新米少女4人組にできることではない。
ギルド職員やハンター達の頭の中は、今、煙を出しかねないくらいの勢いで高速回転していた。
敵対国からの間諜?
……馬鹿な。間諜がこんなに目立ってどうする!
騎士や高名な魔術師の家の出で、幼少の頃から修業していた?
美少女ばかり、4人揃って?
……どんな確率だよ!
常識外れの田舎か、魔境近くの村の出?
いや、きちんとした装備が身体に馴染んでいるし、見た目も動作も洗練されていて、まるで貴族のような……。
若く、美形で、洗練されており、見た目にそぐわぬ戦闘力。そして、世間知らずで常識がない。
そんな者など……。
「「「「「「ああ!」」」」」」
皆が、ポンと手を打った。
そう、その全てに説明が付く理由を思い付いたのである。
「「「「「「エルフ!!」」」」」」
「違いますよっっ!!」
美形揃いでいつまでも若々しく、見た目より遥かに強いエルフと間違われるのは、ただの人間にとっては褒められたということであり、誇らしいことであった。
……さんざん『エルフ臭い』、『ドワーフ臭い』と言われ、変に拗らせているマイルを除いて……。
* *
あの後、自分にもやらせろと名乗りを上げた数パーティと戦い、最初のパーティの面子が丸潰れになるのを防いでやった、『赤き誓い』。
まあ、多くの者と戦えばデータがより正確になるということもあったが、あのままでは模擬戦を受けてくれたパーティの立場がなくなると考え、挑戦してきたパーティ全てと戦ったわけである。
……そして、最初のパーティの名誉は守られた。
「……で、どうだったんだ?」
模擬戦の後、再びギルドマスターの部屋へと戻った『赤き誓い』に、ギルドマスターがそう尋ねてきた。
「えぇと、……普通?」
「普通だったよね……」
「普通でしたね……」
「普通だったわよ……」
「「…………」」
言葉に詰まる、ギルドマスターと受付嬢。
ギルドマスターだけでは心配だからか、受付嬢もギルドマスターに付き添い、一緒にいる。
ふたりが黙っているのは、その言葉によって色々なことが確定したからであった。
この4人が、自分達の実力を正確に認識していること。
出身地においても、突出した強さであったこと。
……そして、エルフではないことは、先程明言されている。
おそらく、ドワーフや他の種族でもなく、人間であろうと思われる。
「な、ならば、ここのハンター達の実力は、お前達の出身地周辺の者達と大して変わらないということか?」
何とか持ち直したギルドマスターがそう尋ねたところ……。
「そうですね。私達の出身地とあまり変わらないと思います。
……あ、ここって、Cランクの上はB、A、Sまでですか?」
「あ、ああ、SランクはAランクに対しての『それ以上』という意味だからな、それより上の表現はない」
マイルの念の為の質問に、そう答えたギルドマスター。
どうやら、SS、SSS、EXとかはないらしい。
人間、同じようなことには同じように判断するものらしく、旧大陸の者達と同様の考え方をしているらしかった。
……いや、このあたりは、両大陸にまだ交流があった頃に制度が作られたため共通なだけかもしれないが……。
「……ということは……」
「原因は、ハンター側が弱いということではなく……」
「魔物が強い、ということですか……」
マイル達の言葉に、ほっとしたような顔のギルドマスター。
そう、それは、『お前達は弱い』と言われたのではなく、この少女達の出身地周辺にいるよりも遥かに強い魔物達相手に奮闘している自分達を誇れる言葉だったからである。
自分達は、他の地域より強い魔物相手に、健闘している。
ハンターにとって、そしてギルドマスターにとって、それは誇らしいことであろう……。




