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episode42 【教室】 第二幕へのプロローグ!



 智恵理が教室に戻ると、クラスメイト達からは露骨に避けられ、噂話をする塊を膨張する。固まった女子生徒達からのぼる話題といえば、球技大会での一件。それから、さっきの暴行未遂事件。

 忍にだけは落ち度があるとはいえ、こちらが反論しないことをいいことにどんどん悪評は言いたい放題の、尾ひれはつけ放題。

 それを打破したのは忍。

 犯罪予備軍の忍のにらみつける攻撃に怯んだ女子生徒達は、攻撃方法を変えて一点集中へと転じる。

「だいたい、常磐城さんをみんなでなんとかしようとしたんじゃないの?」

「あの子がイヤって言ったらしいのよ。そのせいで、バスケの試合おかしくなったらしいわよ」

「えー、じゃあ常磐城さんが影で全部操ってたってこと?」

 彼女たちが導き出したのは、一方的な急所への揺さぶり。智恵理に言葉の暴力を行おうとすれば、忍の実力行使が、暴言ボキャブラリー豊富な御巫さんからは返り討ちの恐れがあるから。

 いつだってどんな嫌がらせにも耐えてきた常磐城さんは、文句一つ返さない。だから格好の餌食とばかりに、みんなは心にもない言葉を吐ける。

 咎めようにも聞こえるか聞こえないかの微妙なライン。下手に口出ししてもしらを切れる声量で、計算高さが透けて見えて。

 そんな中、常磐城さんは俯かないで、何かをじっと堪えていて。

 こんなくだらないことで、彼女が嫌な思いをするのは嫌で、なによりそんなことをしていいのは、智恵理だけだ。

 智恵理は常磐城さんの手を無理矢理に握って、壇上へと上がる。呆気にとられている彼女たちを見て、少しは清々したけれど、まだまだこれからだ。

「みんな、勘違いしないで今から智恵理の言葉を聞いて欲しいの」

 静まり返った空間、常磐城さんと繋いだ手は緊張からか汗が滲んできて。今更ながら後悔の念が押し寄せてくるけれど、これだけは宣言しておきたい。


「常磐城さんは智恵理のものだからっ! だから、ここにいる誰にも指一本触れさせないっ! 手を出すならまずは智恵理に話を通してからしてっ!」

 

 一気に言い終えた後に待っていたのは、底知れぬ充実感。これで常磐城さんを貶めようとする智恵理の行動に、余計なチャチャをいれるような輩はいなくなる。そう思って常磐城さんを見ると、なぜか首の根っこまで朱に染まっている。

「わたくし、わたくしは、そのわたくしは」

「えっ、と、常磐城さん?」

「は、はひっ!?」

 呂律も回らないほどに動揺する常磐城さんに負けず劣らず、クラスの面々も混乱しているようだ。

「えっ、それってそういうこと? この学園ではそこまで珍しくないことではあるけど」

「茅様に開発されちゃった女の子もいるものね」

「それにしてもここまで大胆に告白するってことは、かなり本気よね」

 どうして綾城さんの名前が飛びでくるからは不明だけど、智恵理の本気度は伝わったようだ。

 壇上にいる智恵理たちに、机を倒しながらも猛然と突進してきたのは御巫さん。怒り猛る彼女に気圧されるが、背中の黒板に阻まれる。

「どういうことなのか、ちゃんと説明しなさいよね」

「えっ……と、かなり長くなるからここではちょっと遠慮したいかなっ」

 自分の汚点ともいえる過去から事の顛末を話さなければいけないのは、ご遠慮お願いしたい。

「じゃあ、今からあなたの家に行くわよ」

 断りきれない詰め寄り方に、忍へと助けを求めるのだけど、なぜか魂が抜け出たような屍になっている。忍を気遣おうと壇上からおりようとするけれど、腕を掴み取られる。

「ちょっとぉ……逃がさないわよ」

 御巫さんの鬼神の表情に、作り笑顔すら作れない智恵理は、ただただ天の助けとなる担任教師が教室に入ってくるのを待っていた。

つづく!!

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