episode41 【渡り廊下】 舞台袖の観覧者達!
「よーし、これでめでたし、めでたしだねっ」
つばめの指示で、常磐城と御巫を探すのに助力したのはこれを見越してのことだったのね。
各々の落としどころを見つけた彼女たちに、もう重々しい空気は流れていない。あれこそクラスメイト達といった風情で、楽しそうに歓談している。
「私たちが手を出しても良かったのかしらね」
「いいんだよっ、きょーこちゃん。終わりよければ全てよし。ダメだった時は責任なんてとらなくていいよっ。それが第三者の最大の利点でしょ」
「そういう感じでいいのかしら」
「もうっ、きょーこちゃんは真面目だねっ」
眼帯一年生は人探しなんて面倒だとパスしたから、つばめと二人きりなのだけど周囲の目線が厳しい。智恵理を見守っている場所が、人通り多い渡り廊下付近。二人して建物の影を眺めていたら、それは気にする対象になり得るだろう。
「つばめ、そろそろ教室に戻るわよ。どうせ形だけのHRが待ってるのだから」
「うん、その前に聞きたいことがあるんだけどね、人の上に立つ資格のある人間ってどんな人間だと思う?」
こちらの反応を試すかのように見上げてくるつばめの声色から、ふざけてはいけない雰囲気を感じ取った。
「そう……ね。例えば、自己中心的だけど自信を持って自ら孤高になる人間、孤立するけれどリーダシップを持った人間、それから自分からは命令は下さないけど才能で他人を惹きつけるスーパースターとかかしら」
「おねーちゃんはね、そのどれでもないと思ってる。なんだか分かる?」
当然、首を振る。
「……平凡な人間だと思う」
「平凡?」
「そうだよっ、平凡だからこそ、下の人間の気持ちが分かるでしょ。生まれ持った才能や、失敗を恐れない行動力を持った人間は上の人間になるけど、いつも下の人間の顰蹙を買うでしょ。それは下の人間の気持ちを疎かにしてるからだよ」
つばめが何を言いたのか分からなくて、ただじっと黙って耳を傾ける。
「だから……一度くらい間違えたからって、きょーこちゃんには何かを諦めないで欲しいんだ。平凡な智恵理ちゃんやきょーこちゃんにしかできないリーダーだってあるよっ」
「…………」
つばめには全部お見通しだったみたいだ。私がバスケ部の部長を辞めようか迷っていることも、これからどうすればいいのか五里霧中になっていたことも。
「ありがとね、つばめ」
「いえいえ。クラスが代わっても、きょーこちゃんはおねーちゃんの大切な友達ですからっ」
くるりと回ってつばめは、「早く早く~」と先に行ってしまう。追いかけながら思考に落ち着くのは、部長としてやるべきこれからのこと。
とりあえず、有望な新入生を勧誘することから始めよう。
この学園では、球技大会までは原則として大規模な部活動勧誘は規制されている。
だから、早くて明日から運動神経抜群で、将来が有望な選手にはつばを付けるだろう。新入生の実力を知る上でも、この球技大会は重宝されている。
私は、秋月もみじだけはどんなことをしてでもバスケ部に入部させようと心に誓った。




