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episode35 【体育館】 極彩色の三羽鴉! (中)



「ここにいるみんなが後ろめたいっていうのは、どういう意味なのよ?」

「あれ? そういえば偶然なことに、この最悪な状況を作り出した発端の一因である有沢先輩がここにいるとは思わへんかったわ。本当のこと言って気に障ったのなら謝りますけど、どないします?」

「……猿芝居はいいから、早く答えてくれない?」

「んー、そう気を悪くしないで欲しいわ。集団で秋月もみじという一人の編入生が悪目立ちしていたから、みなさんで潰そうとしたんやけど、潰れるどころか今やこの学園に新しい風を巻き起こした風雲児。今更頭を下げられへんみなさんは贖罪のためにも、声を張り上げて秋月もみじを応援しているというだけのことやろ」

 秋月もみじに悪意の孕んだ噂が学園中に触れ回ったのは真実で、私がその片棒を間接的にとはいえ担いだのもまた事実だ。

 バスケの主将として部員をまとめきれず、フラストレーションが溜まっている時に、秋月もみじが命令を一切聞かないうちの期待の新人と仲良くバスケについて語り合っていた。それが我慢できなくて、大人気なくも割り込んでしまった。

 それを他の部員が秋月もみじが一方的に悪人だと歪曲した噂が流れ、それがきっかけとなって彼女と上級生との間に深い軋轢が生まれてしまった。

 だけど――

「それとは関係なしに、ただみんな秋月もみじのプレイに感嘆しているだけよ。華のあるバスケットプレイヤーはその類まれなる技量で、見ている人間を魅せることができるっていうだけの単純な話よ」

 ここにいるみんなは、ようやく彼女をこの学園の一員だと認めただけだ。

 それがたとえ彼女が一級プレイヤーだったからとか都合が良い理由であっても、これだけ沸騰しているみんなの熱を感じることができれば、そんなことは些細なことだ。

「あなたはただ澱んだ瞳で物事を視ているからそう思うだけよ。もっと明瞭簡単素直に物事を視ることもきっと必要よ」

「あはは。よりにもよって、よりにもよってやわ。A・B・C・D・Eすべてのクラスを経験してもまだこの学園に居残り続けることができている、有沢先輩からそんな愉快な説教を聞けるとは思わんかったわ」

 皮肉めいた口調に眉を八の字にする。

「ただ私は中途半端なだけよ」

 他クラス移り変わることすら珍しいケースで、全クラスに在籍したのは恐らく歴代でも私だけだろう。それはあらゆる分野で優秀だったからというわけではなくて、どのジャンルにおいても極めることができなかったというだけの話だ。

 器用貧乏というやつだろうか。

 努力しなくてもある程度までは人並み以上にはこなせるけれど、ある一定の線を越えられずに挫折する。遥か後方にいた人間に追い越されては、他の領域に逃げているだけだ。

「こらー! おねーちゃんを無視して話さないでよー! そんなに話し込むなら、次の試合どちらが勝つかを話そうよっ!」

 ぷんすかと可愛く肩を怒らせるつばめのお蔭で、空気が弛緩する。

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