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episode30 【教室】 団結のための密会!



「……よってたかって常磐城さんを?」

 分厚い雨雲に覆われた空は薄暗さを伴いながら、多量の雨を止めど無く放出する。

 盛り上がっていた外の競技の球技大会は幸い午前中のプログラムだったので、中止に追い込まれることはなかった。

 智恵理の参加するバスケを含めた室内競技が、既に開始されている。

 そんな折、Aクラスのクラスメイト達に呼び出されたと思ったら、想定外の意見を告げられた。

「そういうことじゃなくて、ねえ?」

「そうそう。ちょっとだけ懲らしめるってだけで、そんな物騒な言い方しなくても……」

 奥歯に物が挟まった物言いをする、同じバスケをするメンバーの二人。互いが余計なことを言っていないか、目配せの確認をしているのが卑怯臭い。

 説明を求めるためにも、直球勝負の言動を信条としている御巫さんに視線を固定する。

「これがクラスの総意よ。常磐城さんは独りよがりの行動が目につく。だったらもうはしゃぐことができないように、出る杭は打つのが自然の流れでしょ。あなただって巻き込まれて内心辟易してたんじゃないの?」

「だからって、なんでこんな時に公開処刑みたいな手段でやるの?」

「こんな時だからこそよ。球技大会は強制参加行事。周囲の目が集まる時に恥をかかせば、流石にあの鈍感女だって気がつくでしょ? 自分がどれだけ場違いなのかって。邪魔なのよ。仮にもクラス代表に選ばれたのに、あんな馬鹿丸出しの行動ばかりされたら」

 馬鹿丸出しという単語に反応したのか、クスクスと小規模の笑いが起こる。他人を陰で嘲弄する嗜好の持ち主の方々らしい。

 いい趣味とは到底いえないけれど、誰か一人を悪に仕立て上げることは団結力を強める有効な手段の一つだといってもいい。

「御巫さんは、どうしてそこまで常磐城さんを嫌うの?」

「そんな私情は皆無よ。ただ私は歴史あるこの学園の、ひいてはこのAクラスの秩序を保つために代表として立ち上がっているだけ。そんなことぐらいわかるでしょ?」

 そんなことわかるわけがない。

 けど、だからといってここで反発しても、なんの得もない。

 ここで下手に庇い立てしても、標的が智恵理に変更するだけかもしれないし、なにより彼女の肩をもつ理由なんてない。

 いずれは常磐城さんに恥辱を味あわせる予定が少しばかり早まっただけだ。

 だったら、自分の返答も決まっているだけだ。

 それなのに、いまいち気乗りしないのはなぜだろうか。

「バスケの試合中にちょっとばかり、みんなで常磐城さんを無視するだけ。それ以外はなにもしなくていいんだから、簡単でしょ? だから――」

「わかったよ。智恵理も協力する」

 突然承諾した自分に、御巫さんは唖然としたけれど「ようやくわかってくれたのね」とほくそ笑んで必要以上につっこんではこなかった。

 もしも昨夜のうちにつばめ義姉さんと話をしなかったら、もしかたらこの提案を断っていたかも知れない。

 だけど、話をしていて原点回帰したような気がする。

 智恵理が今まで生きていた意義とは、昔の自分が浸かった同等の泥沼を仇にも味あわせるためだったってこと。復讐を果たすこそが自分のアイデンティティだってことは、最早遺伝子レベルにまで刻まれていることを昨日のうちに思い出せた。

 だからもう手段なんて選んでる場合じゃないんだ。

 智恵理は喜んで、敵である常磐城さんを討つ。


 


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