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episode28 【自室】 闇夜の来客者! (上)



 小さい額縁のような枠に収まっている窓には、力ずくで割ろうと試しているかのような雨粒が叩きつけられている。研ぎ澄まされた刃のような豪雨と音を奏で合うのは、腹の底を這うように轟かせる音速を超越した雷。

 カッと闇夜を一瞬切り裂く稲光は鬱陶しく、耳障りで暗澹たる天候は気分を陰鬱とさせる。それでもカーテンを閉める気にはならずに、ただただ憂いを伴う表情が窓に映るのは眺めている。

「これじゃあ、明日の球技大会は中止かな?」

 気まぐれなままに、めまぐるしく気候が変容する梅雨の季節は、心がついていけずに宙ぶらりんになりやすいのかも知れない。

 自分の揺るがないはずだった生きる指針は、今日のとめどない感情の雨で煙ってしまった。

「常磐城さん……温かった」

 他に誰もいない教室で二人抱き合った時に感じたあの温かな体温は、自身の凍りついていた感情を溶かしてしまった。

「――もう、智恵理は変わるべき時なのかも知れな――」

 コンコンコン、と控えめなノックがされる。

 思わず時計に視線をスライドさせると、深夜帯で家の誰もが就寝している時刻。

 ズブズブと高級ベッドに手首まで沈んでいた手に力をいれ、反動でやおら立ち上がる。

 服装はパジャマ姿にしては、ラフな格好だが問題ないだろう。

 待ちきれなかったのか、一枚のドア越しにまたもやされたノックにうんざりとしながら、ドアノブに手をかけて闇夜の来客者を迎え上げる。


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