episode18 【体育館】 本当に大切なこと! (中)
俄かに両クラスの生徒たちが集まり、基本的な準備体操が終わると、次はコンビを組んで柔軟体操をやることになった。自由に選んで決めるような雰囲気の中、トーンの高い声をみんな上げながら相方を探している。
そして、そんな時に一人だけ。
手を取り合ったり、肩を並べ合いながら思い思いに談笑している中に、ポツンと取り残された常磐城さんがいた。
所在なさげな手を中空に漂わせながら、なんとか勇気を振り絞って声をかけようとするが、その決心はすぐに掻き消える。意志が喪失される瞬間は、伸ばした手の元にいる女の子が楽しげにほかの女子と声をかけ合ったとき。
思考する前に足は動いた。
彼女の姿を見て安い同情が湧いたわけでも、過去の孤独な自分と投影し暗い愉悦を感じたわけでも、情弱な精神につけこもうという打算を仕掛けようとしたわけでもない。
ただ――傍にいたかった。
それだけだった。
だけど、
「智恵理様」
背後から忍び寄るような声が掛けられる。だけど、結果として彼女の弱々しい声に無視を決め込むようなことになっても、視線はただ一点に絞り込まれていた。
今にも消え入りそうな彼女の背中に。
だからもう、なにも聞こえ――
「智恵理様、私組んでくれる方がいないんですが」
そして、振り返ると苦しげな微笑を作る忍がいた。無理をして笑おうとして、崩れてしまっている不自然な表情。そんな彼女の願いを振り切ることなんて、智恵理にはできなかった。できるはずがなかった。
「だったら、智恵理と一緒に――」




