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漫画家の家へ! ①

 私はカメラを持ってマンションの一室の前にいた。

 今どきオートロックじゃないが、設備などはよいマンション。

 家賃高そうだな、なんて思いつつインターホンを鳴らす。


「はいはーい……」

「こんにちは」

「……誰ですか?」

「先生の作品のファンです」

「あのですね……。ファンだからと言って家に凸してくるのは……」

「構わない。そいつは僕の客だよ」


 と、瀬野が「ようこそ」と無愛想に告げてくる。


「時間ぴったりにくるとはわかってるじゃないか。中に上がりたまえ。茶でも出そう」


 そういって去っていく瀬野。

 私は中に上がらせてもらう。タイツなので滑るけどまぁ、転ぶのも痛いし転び得だろう。


「すげー美人……」

「アシスタントですか?」

「は、はい! 瀬野先生ところで四年アシスタントをさせていただいてます阿波(あわ)と言います!」

「和平です。今日は撮影も兼ねて来ました」

「さつ、えい?」


 私はソファに座る。

 仕事場には五つ机があり、真ん中の茶色い机は瀬野が座り、他の四つの机にはアシスタントが座り原稿作業をするようだ。

 なにやらガリガリとひたすら原稿作業をしている。


「担当編集が無茶言いだすものでね。あと二日で短編漫画を仕上げろと。休載の穴埋めだそうだ」

「大変だねえ。私と話してていいの?」

「良くはないが、君との約束は果たさねばなるまい。約束を破るなんて人間として終わりだろう」

「律儀だねぇ」


 私はお茶を啜る。


「カメラ、回していい?」

「原稿を映さないようにできるのなら構わない」

「オッケー。漫画家のルームツアーやって、とりあえず私も原稿手伝おうか」

「出来るのかい?」

「まぁ、やればなんとかなるっしょ」

「不安だが……。まぁいい。まずはルームツアーといこう」


 私はカメラを回しつつ、瀬野と部屋を映していく。

 本棚には他の先生の単行本などが飾られ、隣には原稿のコピーが。

 すげ、これ生原稿。


「生原稿じゃん」

「そうとも。うちの編集は相当おっちょこちょいでね。たまに原稿を無くすのさ」

「え、それダメじゃない?」

「編集者としてあるまじきものだよ……。アレには本当に参ってるのさ。僕たちもネタバレを避けるために全員で探すことになるからね。だから無くしてもいいようにあらかじめコピーをしておくのだよ。まったく……」


 よくクビにならないな。

 瀬野は少し辟易としているようだ。


 ルームツアーも終わり、私は漫画執筆体験をさせてもらうことにした。

 瀬野に難しいが背景を描いてくれと言われる。この写真の風景を異世界のように写し込んで欲しいということ。

 まずは下書きというが……。


「下書きなんてなかったらどうなるか試してみるか」

「失敗しますよ……」

「まぁ見てなって」


 初めてGペンを持った。力加減が難しいが、スラスラ〜と描ける。

 少し石の質感が欲しいか?


「下書きなしで描けてる……」

「君、前々から思ってるがなんでも出来るな。流石の僕でも少し開いた口が塞がらないね」

「うまいもんでしょ。漫画だから漫画のような質感を維持しながら背景描いた。けどうーん、奥行きがな……」

「そこはキャラで隠せば問題はない……が、少し聞こうか。経験は?」

「ないよ?」

「なくてこれか……。末恐ろしい」


 めちゃくちゃ出来が良かったようだ。


「これマジで原稿に使えますね」

「ああ。使おうか」

「マジすか? これツイートしとこ」


 私は写真を撮る。


「皆さんの原稿作業の様子を少し撮らせてもらっても?」

「構わない。どれ、席につこうか」

「私があいさつしながら入ってくるので、少し忙しそうに」

「了解だ」

「先生、この人誰ですか? 動画投稿者?」

「じゅんぺーというやつを知らないのか?」

「え、じゅんぺーさんなんすか!?!?」


 と、机に向かって一心不乱に書いていたアシスタントの人が回転椅子を勢いよく回転させこちらを向く。

 「うんぁ、マジだ!」と言いながら握手を求めて来た。


「配信いつも見てます!」

「ありがとう」

「先生! じゅんぺーさんが来るなら来るって言ってくださいよ! 俺、初めての人不安で見られないんですから!」

「僕の知ったことではないだろう。君も忙しい演技だ。それぐらいは出来るだろう?」

「あ、ちょっと待ってください! 髪整えてきます!」

「ボサボサ髪がどうなるわけでもないだろうに……」


 白Tを着て小太りの男性がトイレの方に向かっていった。


「女性のアシスタントもいるんですね」

「どもー」

「そうでもない。あの『Re:コメンド』の作者は女性さ」

「マジ? あのアニメ4期決定されて社会現象にもなったあの?」

「少年誌に女性漫画家がくるのは喜ばしいものだよ。少年と謳ってはいるが、読者の年齢や性別は問わない。あくまで題名的なものなのさ」

「女性もここまで参画出来るようになったかー……」


 時代は進歩してくもんだ。

 

「お待たせしました!」


 と、小太りの男性が戻ってきた。

 少し髪がサラっとしたくらいで特に変化はない、が。


「不自然」

「戻してこい」

「そんな……」


 そんな髪型のやつあるか。











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黒猫は眠らない
新作です。VRMMOものです。
読んでもらえると嬉しいです。
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