囲まれた
暗号解読させてるとはいえ、そこまで時間は割けない。
私は30分が経過して答えが出なかったので、一応ここだと言う目星を言うと、ゼノは。
「金烏玉兎……。ふむ」
「気づいた?」
「烏兎。マップをみておくべきだったか。ぬかったぞ」
爪を噛んでいた。
「烏兎……?」
「中国の伝説から来た言葉で、正式には金烏玉兎っていうんだ。太陽と月って意味の言葉だよ」
「あ、たしかに満たしてるね」
私たちはとりあえずその場所に向かうことにした。のだけど、街を出ようとしたとき、大人数のプレイヤーに囲まれる。
プレイヤーたちは武器をそれぞれ構えていた。
「じゅんぺー、黄金郷の在りか分かったんだろ? 教えろよ」
「最初に俺たちが行く」
と、私から黄金郷のあり方を聞きたいようだ。
黄金郷があるのを配信で知って、探しているのだろう。そして、わかったと告げたので見るのをやめてログアウトしたが、聞いてないことを思い出した、というところか。
「じゅんぺー君、君ならこの場をどう乗り越える?」
「手ェ出してきたら応戦」
「あり方は教えないのかい?」
「自分で考えるようなこともしない輩には教えない」
『こいつらちょっとは自分で考えろよ』
『だっさwwww』
『じゅんぺーがわかったところで切り上げたんだろうなww 早くしないと間に合わないもんなwww』
『じゅんぺーに敵わないと思って多人数とかだっっ』
『草』
話は通じないだろうな。
黄金郷が目的なのだから目的は同じ。ただ、暴力に訴えて無理やり聞き出そうとする。
こういう輩はまぁ、いるんだよな。
「ど、どど、どーするべ!! 囲まれたぁ!」
「慌てないのミツキ! わ、私たちだってつよいんだから……」
「二人とも声震えてるよ……。ま、ボクも戦いたかったから丁度いいね」
「ふん……。低俗な輩どもめ。僕の邪魔をするな」
各々が武器を構える。
男たちは襲いかかってきた。
「全員は殺すなよ! 聞き出せねえ!」
「やってることが山賊と同じじゃないか…‥」
ルシフェルのツッコミがもっとも。
まぁ、人数集めれば勝てるなんて思い上がられたもんだ。この程度の人数はたしかに苦戦するが、対応できないわけではない。
「VRMMOのPvPにおいて重要なのは急所を狙うこと」
急所は与えるダメージが3倍になる。
人間の急所はわかりやすい。左胸だ。左胸に攻撃を当てれば3倍となる。
私自身、防具は着てないからスキルなどの恩恵はないが……。
「不惜身命スキル」
体力を削りパワーを上げる。
「厄介なテメェから死んどけ!」
飛びかかってくる男の攻撃をかわし、左胸に双剣を2回突き刺す。
そのまま男はキルされた。カルマ値が上がっていない。それはそう。あっちから手を出したから。
「だずげでぐんろ〜!」
「ははは! 足手まといだなお前は!」
「んのおおおおおお! せいやー!」
左胸に槍を突き刺すウヅキ。
「足手まといなんかじゃなくてあんたらが卑怯なの!」
「そうそう。もっといってやっていいよウヅキちゃん」
ウヅキは戦い方もわかってきたなー。
ま、でも、こんだけの人数は時間かかるな……。と思いつつも、私はキルしていくが。
「隙あり!」
「あ」
不意をつかれた。
流石にこれは受けるしかないか……?
「そこまでですわ〜!」
「罪と罰、ただいま参上!」
「じゅんぺー!! だいじょーぶ?」
「ただいま参った」
罪と罰の二人とマドカとシシオの二人が助太刀に来てくれたようだ。
罪と罰、シシオとマドカも戦いに加わる。気がつくと、相手は同人数に減っていた。
「各々タイマンか? 僕は自慢じゃないがそこまで強くはない」
「自慢じゃないよほんとに……」
「リーダーは私がやるか」
あの指揮をとっている男がリーダーだろう。
「こうみえて、私今結構ムカついてんだよね」
『マゾヒストもキレるんだ』
『まぁ、これは相手が胸糞だもんな……。負けてたらもっと胸糞』
『伊達にプロゲーマー名乗ってないね〜』
私は数が減って少し怯えているリーダーに近寄る。
「黄金郷を探したいのならこういう方法ではなく、私に相談すればいい。こういうことをする以外にも方法はいくらでもある」
「う、うるせえよ! てめえばかり見つけてんじゃねえか! 少しくらい……」
『こいつ今配信してる』
『荒らされてて草』
『荒らすのはダメだけどやってることがことだし……』
『100人いた登録者数が減っていってて草』
こいつ、配信してるのかよ……。
こういうのはせめてしないだろ。じゅんぺーに勝つ瞬間を収めたかったのかもしれないけど。
「ま、私からは何も言うことはないよ。君とはもう絶対会いたくないしコラボもしたくない」
私はその男をキルしたのだった。




