百鬼夜行 ④
やっときたミケの後ろにはたくさんの妖怪が。
「何が起きてるかわからにゃいけど……全軍、突撃~! これ以上あちらさんの妖怪に人間の里を滅ぼさせるにゃー!」
号令が飛んだ。
数多の妖怪は人間の街を襲う妖怪に襲い掛かる。妖怪戦争……だな。はたから見ればこれは戦争でもなんでもなく妖怪たちが集って移動しているような感じにも見えなくない。百鬼夜行かな?
すると、ミケの背後に金棒を持っている鬼が出てきた。
「あれ仲間?」
「ミケの姉貴! 獲物はあれですかい?」
「あんたはあちらさんの青鬼を食い止めるにゃ! 鬼は力強いから無理にゃ!」
「合点承知の助!」
すると、その赤鬼は金棒をこちらに投げつけてくる。私は思わずガードする姿勢をとったが、狙いは私の背後だったようだ。
私の背後を見てみると、青鬼がぐらっと姿勢を崩している。どうやら不意を突かれるところだったようだ。
「大丈夫ですかい? 知らぬ妖怪よ。お前さんはどちらの陣営かわからねえが狙われてたってことはこちら側でいいんだよな?」
「そっちの味方でいいけど……ありがと」
「いいってことよ!」
赤鬼はにんまりと笑う。
笑顔が怖いが、それは鬼だからだろうな……。
すると、今度は私たちの目の前に金花猫が落ちてきた。
玉藻前に反撃され、墜落したらしい。青鬼を踏み潰すような形で落ちてきた金花猫。赤鬼は金棒を構え、金花猫をにらむ。
「てめぇ、あの玉藻の懐刀の……」
「もう私は敵じゃにゃい。あの憎き玉藻を倒すのにゃ」
「ハァ?」
「人間を恨めと玉藻から言われていた。けど……恨むべきは玉藻にゃ! あいつ私を切り捨てようとしやがって……。絶対に許さない!」
「よーするに、こちらに寝返ったって解釈でいいのかよ?」
赤鬼はこちらに顔を向けて聞いてくる。
「私に聞くのかよ……。まぁ、寝返ったって解釈でいいよ。現に妲己と共闘してるわけだし」
「妲己様が……? うわ、マジでいる。ならやる気見せねえとなぁ! 妲己様にいいとこ見せるんだ、俺は」
そういって、青鬼に金棒の追撃。
青鬼はそのまま消えていく。赤鬼は敵側の妖怪をどんどん蹴散らしていった。鬼の力ってのはどの妖怪よりも強いらしく、鬼が無双している。
『あのフィジカルチートだろwww』
『赤鬼www』
『あれは勝てねえわwww』
私も見とれてないでそろそろ参戦しようか。
私は双剣を手にしようとすると、ミケが私を止める。
「今行かないほうがいいのにゃ」
「なんで?」
「これ以上じゅんぺーに戦わせると妲己様が怒るのにゃ。じゅんぺーはお客様なのにゃ」
「お客様だから気遣われてるの?」
「そーにゃ。さっきは数が少なかったからとめにゃかったけど……。今はさすがに戦わなくてもいいのにゃ。これはあくまでうちらよーかいの問題。じゅんぺーはこの百鬼夜行の観測人としていてほしいのにゃ」
「あ、そう?」
私は武器を収める。
どうやらあまり参戦してほしくはないということ。私は仕方がないのでミケとともに百鬼夜行を見ていることにしたのだった。
「……ミケは参戦しないの?」
「うち!? うちは……参謀だから!」
「戦えないの?」
「金花猫に余裕で負けるくらいには弱いのにゃ」
「あれはあっちの猫さんが強いだけじゃない?」
「あっちの猫さんは戦えるのにこっちの猫さんは戦えにゃい……」
なんか落ち込み始めた。




