武士
東の国。正式名称は東那というらしい。
東那は他の国同様、身分というのがある。が、他の国とは少し違うところがある。
というのも。
「私もその試験に合格したら武士の身分が与えられるってこと?」
「如何にも! ただ、試験は難しいであるぞ」
武士の試験に合格すれば、誰にでも武士になれる。
が、試験は難しいということ。いつ何時でも試練を行なっているらしいので、とりあえず取りに行くことにした。
試練は天守で行われるらしく、天守にとりあえずは訪れてみた。
「たのもー」
「何奴だ?」
「武士の試練を受けに来たんですけど」
「そなたがか? やめておけ。女で武士は無理だ」
女で武士は無理?
ああ、武士は男ばかりなるもんな。まあ、別に関係ないが。
「武士にしてください。試練を受けますので」
「ふむ……。わかった。来るが良い」
と、厳つそうな男に連れられてきたのは道場らしき場所。
床が全てフローリングのような感じで、男の人たちが木刀を振るっている。
「試練は簡単だ。刀を持ち、試験官に勝利すること。刀は二種類あり、二刀流のものと木刀だ。試練は木の刀を使用する。どちらか選ぶがよい」
「お、じゃ、慣れてる二刀流ので」
「承知した」
小さい木刀2本を投げ渡された。私は二つの木刀を握りしめる。
「試験官は拙者が務めよう。女子だからといって容赦してもらえると思うなよ!」
「分かってますとも!」
私から仕掛けることにした。
右の刀を思い切りスイング。その隙をついて攻撃してくるので左手の刀で受け止めた。
「なんと……!」
「まず一発!」
右の刀を振り下ろす。
肩に鈍い一撃が入った。試験官は苦しそうな顔を浮かべる。
周りで稽古していた人たちも手を止め、こちらをジーッと見ていた。
「見くびっていた。貴殿は……強い!」
「でしょ? ま、まだ合格もらってないし、攻撃は続けるよ」
私はもう一度刀を振るう。
受け止められるが、素早くもう一発。何度も攻撃を防がせた。
「すげえ、タゴサキ殿が防戦一方とは……」
だが、攻撃しつづけてもアレだな。
いつしか捨て身で攻撃に転じてくるはず。そろそろかな?
すると、タゴサキと呼ばれた男は右の刀を左手で掴み、右手だけで私に一撃を加えようとしてきた。
私は左手の刀で木刀を弾き、掴まれた木刀を軸としてくるっと回転。飛び上がり、タゴサキの顔を踏みつける。
「ぐぬぅ……!」
「やっぱ対人戦の方がやりやすいな」
木刀が弾き飛ばされ、打つ手がなくなったタゴサキ。
私はトドメの一発を入れようと近づいた。
「参った!」
タゴサキは両手を上げ、降参の意を示した、
私は刀を納める。
「見事だ。このままだと拙者がやられていた。わかった。貴殿を武士と認めよう。つきあたっては、少し書くものがあるのでしばらく待機して頂きたい」
「わかりました」
「木刀は回収しよう」
というので、借りていた木刀を返した。
まあ、手応えはあった。多分、これは結構プレイヤースキルがないと勝てないだろう。
私自身、プロゲーマーと名乗るぐらいなのでプレイヤースキルは高い方だと自負している。
ともあれ、これで武士の身分はゲットだ。
この国では、武士が一番偉い。
歴史でもあるように、身分が高い順で並べると士農工商。武士が最上級。
身分が高いと割と自由も効くので取っていて損はない。
武士のじゅんぺー。ここに見参。




