役立たず
ゾンビたちを倒し終えた。
息を少し切らすウヅキに、縮こまるミツキ。前々から思っていたが、ミツキは自己肯定感が低すぎる。自分を認めていない。
そんな彼女に私ができることは。ただただ、背中を押すことしかできない。それに……。配信に出ている弊害ももちろんあるだろう。
ウヅキに関しては性格上、気にせずいそうだが。ミツキに関しては違う。
多分、頑張ろうと躍起になったのはクラスメイトの存在だろう。
クラスメイトがどんな人かわからないけれど……。話題にはなるだろう。私自身有名ではあるし、そういうのが好きな人は見る。
そこにクラスメイトがでて活躍しているのとしていないのがいたら……。注目されるのは活躍しているほうだろう。
「こればかりは仕方のない問題といえど……ミツキにしちゃつらい問題か」
どうにかしてミツキを活躍させてやらねば。
ここは強引にでもミツキを叱咤する必要があるかもしれないな。
「ミツキ」
「なんだべ……」
「シャキッとしろ!」
私は声を上げる。
その怒声に少しびっくりしたようだ。だがしかし、何も言わない。
「役立たずだとか、そんなのは私はどうだっていいんだよ! 何もできないからなんだ! できないって思いこんでるだけじゃないか! 自分は何もできないからと勝手に決めつけて、勝手に思い込んで、自分を変えようともしないで! 役立たずって言われても仕方のないことをしてるんだ君は!」
「は、はいぃ……」
「いいか? 自分を変えれるのは自分だけなんだ! 自分が変わろうとする理由を他人に、環境に委ねるな! 役立たずだって思うんなら行動しろ! 行動して、裏目に出ちゃったらしょうがない! 私は笑って許してやる! だから役立たずだって思うんなら行動しろ!」
「は、はいぃ……」
「返事はもっときりっとするんだ!」
「は、はいっ!」
この叱咤は裏目と出るかどうか。
ミツキは叱られて、むくれてやる気なくすタイプではないと信じたい。
『いいこと言うなぁ』
『ミツキちゃんがんばえー!』
『この変態はいろいろと分かったことを言うからな……。実際わかってるんだろうけど……』
と、コメント欄もがんばれという励ましの声が。
ミツキは何かぼそぼそと呟いている。そのつぶやきはマイクが拾っていた。『じゅんぺーさんの言うとおりだべ……。じゅんぺーさんに迷惑かけねえよう頑張んねえと……』という声が聞こえる。
よかった。前向きに解釈してくれたようだ。
「じゅんぺーさん……」
「あ、ウヅキ。放置しててごめん」
「いえ、なんか放置プレイもいいなって思ってきたところで……。じゃなくて! あの、こんな配信で叱っちゃって大丈夫です? こういうお叱りってあまりいいイメージがないと思うんですが……」
「はっはっは。まぁ、そうだね。そういうのって忌み嫌われるからねぇ。でも、今の叱咤はミツキの成長に必要なことだと思ったからしたんだよ。配信だからじゃなくて、今しかないんだよ。今しか」
「ならいいんですけど……」
「それより……」
私はウヅキの肩をつかむ。
「放置プレイのよさがわかったんだな……?」
「はは……。私もちょっとマゾっ気があるのかもしれません」
「立派なマゾヒストだよ……!」
『変態が仲間を見つけてしまった』
『事案だぞ』
『いたいけな高校生の少女を変態の沼に引きずり込もうとするな』
『むしろそっちが炎上するわ!』
くっ。コンプライアンス的にダメか!
ウヅキは鍛えればいいマゾヒストになりそうなのにな!




