帰省 ②
祖父母が住んでいた田舎は小さな農村。
選果場という場所に作物を運び、そこで選果をしてもらうということをする。トラックに箱につまれたたくさんのメロンを持っていき、選果してもらい、そして、蓋をしてパレットに積むという作業が行われている。
「やぁ、すいませんね。昨日来れなくて。ちょっといろいろ忙しかったもので」
「心配したんすよー! そちらは娘さんで?」
「娘の潤です。帰省してきててちょっと手伝わせてるんだ」
「どもっす」
「どもー!」
農協の人と話し、レーンにメロンを載せていると。
違うおじさんが中学生くらいの女子に袖を引っ張られていた。メロン農家の人だろうか。
「ねえ! やっぱそうだよ! じゅんぺーさんだよ!」
「他人の空似じゃねえの?」
「本物だって! サインもらってきてよー!」
「サインたってかくもんねえし他人の空似だったらどうすんだよ。そんな有名人がこの町にいるわけねーだろ」
「絶対本物だってえ!」
と、私が本物のじゅんぺーか否かで話しているようだ。
「荻原さんだ。どうも」
「おう、和平よ。娘さん捕まったんだってな」
「そうっす。昨日、それで忙しくてメロン出せなくて。身内から犯罪者が出るのは何とも言えないっすわ」
「ま、そういうこともあるさ。人殺してねえだけマシだマシ。で、そちらのお嬢さんはあんたの娘かい?」
「和平 潤です。よろしくお願いシャース」
私は帽子を取り、一礼。
「やっぱじゅんぺーさんだって!」
「そうですじゅんぺーです」
「本人がそういって……本人ですか!」
と、本人だって言い張っていた女の子が飛び上がって驚いていた。
「本人なんか!?」
「知ってくれてるんですか?」
「娘がこの人ゲームうまいから見てっていうもんだから見てんのよ。驚いた。じゅんぺーはお前んとこの娘なんか……」
二人はものすごく驚いていた。
「帰省して今出荷作業手伝ってるだけですよ。父さん、腰痛いらしいんで」
「昨日ぎっくりして……」
「ぎっくり腰はつれえわ!」
「じゅんぺーさん! あ、ああ、あの、ファンです! さ、ささ、サインを……」
「メロンおろし終わったらしてあげよう」
こんな中学生くらいの子も見てくれてんのか。うれしいねぇ。
私は急いでメロンを下ろし、その女の子にサインをしてあげた。女の子は嬉しそうに舞い上がっていると、農協の人から声を掛けられる。
「有名人なの?」
「あ、配信してるんですよ。割と人気で」
「そうなんだ。名前は?」
「じゅんぺーです」
「じゅんぺー……。ああ! 知ってる! 俺もゲームしてるもん! まじか。じゅんぺーさんが何で来たのん? こんな辺鄙な田舎に」
「いや、実家がここなんで。本名が和平 潤ですもん」
「和平さんとこの! じゃあ今度から和平さんとこにいけば……」
「暮らしてるのは東京なんでいっても無理ですよ。今帰省してきてるだけなんで」
「そっかぁ。あとでサインよろしく!」
「おっけーです」
若い人はゲームするからな。動画調べたら私の動画が割とヒットする。
配信しているといえど動画だって一応投稿してるからな。頻度はそこまで多くないけれど。




