酔うと女王様
私は堅苦しい空気が嫌いだ。
だって、息しづらいし。なんか嫌じゃない? 真面目な雰囲気は本当に嫌なんだよね。私の身の回りはすべてばかばかしくあってほしいと常に願っているから。
「とりあえず、なんか食べてきなよ。飲んできなよ。飲んだらすべて忘れるって。昨日の敵は今日の友ってね」
「なんか、こんな友人出来て苦労してるんだね」
「同情されたのは朝倉さんが初めて……」
「美春でいいよ。もう、なんか今の三吉さんとは友達になれそう」
「だったら私もサンキチでいいよー。みんなそう呼ぶし」
「なんでサンキチ?」
「じゅんぺーが最初にサンキチって呼んだから」
私のせいです。
私はとりあえず冷蔵庫の余り物でおつまみを作り、二人にビールを提供した。缶ビールが開く心地よい音と、ぐびっと飲む二人。
私はとりあえず瓶ビールをラッパ飲み。
「それでさぁー、マネがさぁ、復讐なんてやめておけっていったんだよ! なんのためにもならないって! でも復讐するのって大事だと思うんだよねぇ! だってぇ! なんか悔しいじゃん!」
「それなー!」
「二人ともなんか気が固くなってたからか酔うの早いな」
「おらなに飲むのやめてんだよ! 一気、一気、それそれ」
「おぅ、こんな無理やり飲ませてくるのなんかいいっ!」
「飲めって言ってんだよォ!」
と、美春は近くのクッションを私に投げつけてきた。
私の顔面にあたる。気持ちいい……。私は瓶を傾け、再び飲み始める。
「ほらほら、一気、一気ぃ!」
「ぐいーっと! ぐいーっと!」
「ぷはーっ」
瓶ビールを飲みほした。
うまい。けど、やっぱ一気飲みはきつい。しかも瓶と来た。
「よっぱらったのかぁ? なら目を覚まさせてやるぜえ」
と、コップに水を汲み、私に水をぶちまけた。
なにこの酔っ払い。私の超好みのサディストなんですけど。私はもしかしたらとんでもないサディストを発見したかもしれない。
「床が汚れたぁ~。ほら、ふけよー」
「女王様の仰せのままに……。ちなみに雑巾は」
「おまえのからだでふくんだよぉ!」
「はい、女王様!」
この人間扱いされてない感じ、この雑巾だと思われて足蹴にされてるのもものすごくいい。この美春は酔っ払うと超サディストになる。
次来た時も酔っ払わせよう。そうしよう。
それにしても美春ちゃんいいね。すごくいい。このサディスト加減。求めていた女王様だ……。人間として扱われない屈辱感、雑巾として扱われる凌辱。
メンタルと体を傷つけてくる彼女はとても最高だよ。めちゃくちゃ最高。
「もっと罵ってくださいませ女王様……。このわたしくめにもっと凌辱を……」
「雑巾はしゃべんないんだよぉー! 雑巾としての役割も真っ当できないんですかぁー?」
「わたくしめは卑しい雑巾でございます……」
久しい。この感情の高ぶり。これが恋……。




