炎龍の紋章 ①
私はヒステリアとともに下水道を歩く。
ヒステリアは寡黙なクール美人といった面立ちで、常に冷静。私も私でものすごく美人なので今の私たちは割と画になってると思う。
「七つの龍がこの世界を作った……。七つの龍は国を作った……」
「なんかの暗号?」
「いや……。この国の、この大地に伝わる言い伝えらしいわ。この世界には七つ国があり、それぞれ違う属性の龍が国を守っている。この国、ファイヴァールは炎龍……炎を司る龍がこの国を作り、人間は龍の紋章の上に城を建てた……。つまり、この王都の中にその紋章があるということだと思うのよ」
話を聞くと、七つの国の王都のどこかにはそれぞれの龍の紋章があり、紋章にはなにか不思議な力があるのだという。
龍の魔力が流れているのだといわれているというが、それも俗説であり、仮定の段階でしかないということ。
「あなたがここにいたことは私にとってすごく幸運なことなのよ。いずれ炎龍人になったあなたとどんな手を使ってでも会うつもりだったから」
「幸運ねェ……」
「その紋章には龍脈と呼ばれる力があるらしいの。それに触れれば、炎龍人からパワーアップできるのではという考察もしている。すべては仮定でしかないけれど」
「今さっそくパワーアップってのは考えづらいけど……」
「もちろん、触れるだけでパワーアップというのは考えられないというのもある……。もしかしたらレベル制限というものがあるかもしれない」
「あー」
何レべ以上じゃないと進化、強化できませんというやつか。
たしかにありそうだ。こんなすぐにパワーアップするなんて思えない。
「だけれど……。じゅんぺーさんも興味あるでしょう? 紋章の謎。龍の紋章の謎」
「見透かしてるような目を向けないでよ。たしかに興味あるけど」
「ふふっ。私とあなたはどこか似ているもの」
どこか似ているね。性格は似て非なるものだろうが。
先ほど戦闘した場所に戻ってきた。もちろん、ごみの山もすべて燃えてなくなっており、先に進めるようになっている。
下水道を特に会話することもなく進んでいくと。なにやら扉のようなものがあった。扉には炎のような紋章が書かれている。
ゆらゆら揺れる火の紋章。
「触ってみてちょうだい」
「わかってますよーっと」
私は扉を触ってみると、炎の紋章に光が灯る。
ゴゴゴゴゴと重たそうな石扉が開き始めた。そして、地下へとつながっているであろう階段が出現する。
「いかにもファンタジーって感じ!」
「そうね。ふふっ」
「こういかにもな仕掛けあると興奮するな! よし、さっそくいこう!」
私たちはそのまま石の階段を降りようとすると、私に剣を突き付けてくるヒステリア。
「……何のマネ?」
「私も気分が高まってるの。こういうドラマでありがちなことしてスクショ撮りたいのよ」
「ああ、途中で裏切るってやつ?」
「”あなたはもう用済みよ”ってね……。ふふ、私、ああいう裏切り系のキャラ大好きなの。考察しても裏切られるのがむかついて……それがまた好きなの」
「好きなのはいいけど事前に相談してくれないかな。まじで攻撃されるかと思ってビビったよ」
「それもそれであなたにとってはご褒美なんじゃないかしら」
「それもそうだけどね?」
ご褒美ではあるけども。




