考古学者ヒステリア
忘却の雫。
それはあの龍が私にはなったような必殺技だろう。
スキルを使うと、私の手のひらの上に小さい炎の玉ができた。炎の玉は空中に浮き、小さく渦巻いている。力をためているような感じかな。
二人はとりあえず、私に攻撃が来ないよう食い止めていた。
「急所はそこだね!」
罰目の使用武器はライフル。
銃のような見た目をしている武器で、遠距離特化武器だ。魔法を銃弾として放つ武器なので、魔法攻撃みたいなもの。撃つたびにMPを消費する。だがしかし、ものすごく強力な武器だ。
一方の罪子は爪。爪は超近接武器ながらも斬撃属性を併せ持つ武器で、物を斬ることができる。剣士とは違い、遠距離攻撃は一切できない武器だ。
「ま、まだですの! あんまりダメージ与えられてる気がしませんの!」
「あとちょっと」
私の手のひらの炎の玉はどんどん青くなっていく。
青くなり、そして、紫色へと変化を遂げた。そして、忘却の雫を発動可能というアナウンスが流れたので、私はその炎の玉を地面に思いきりぶつけてみた。
すると、炎の玉は爆発し、爆発の波動がそのゴーレムたちを包み込む。
忘却の雫はモンスターたちを焼き殺した。
ものすごい威力だな……。まさしく存在を消し去り忘れさせるかのごとき威力だ。MPはごっそり持っていかれて、もうスキルが使えないくらいにはないが、モンスターたちは見事に全滅。消し炭となって消えたのだった。
『なんちう威力だ……』
『なにそれ』
『それあり?』
『タイムラグはあるにせよ、あのゴーレムを一撃で消し炭にする火力……。まじで恐ろしい技だな』
コメント欄はさっきの忘却の雫のおかげで盛り上がっていた。
「と、とりあえず、倒しましたわー! これでクエストクリアですわね!」
「そうだね……。とりあえず報告にいってきまーす」
「わかった。ま、とりあえず下水道からは一緒に出ようか」
私たちはごみが無くなった下水道を後にしようとしたら。
下水道の奥のほうから何か黒髪ロングの女性が歩いてきた。手には本を持ち、その本を読みながら歩いている。
「……あら、こんなところで人に会うとは思わなかったわ」
「誰ですの?」
「プレイヤー、だね」
「ええ。私はプレイヤーよ。このゲームの情報を集めている考古学者とでもいうべきかしらね。私は考察などを主にしているの。よろしく頼むわ」
「考察……。考古学者……。もしかしてヒステリアさん?」
「知っているの?」
「同業者みたいなもんだからね。私はじゅんぺー。聞いたことあるでしょ?」
「……驚いた。あなたがじゅんぺーさん。いつかコラボしたいと思っていたけれど」
「私もこんなところで会えてうれしいですよ。考察とか参考になってます」
ヒステリア。ゲーム考察系のYeyTuberだ。
ゲームにだって歴史が作られている。歴史を知ることも、ゲームの世界観を知るうえで大事なことであり、そういう設定もゲーム好きにとっては奥深いものだ。
そういう世界観にどっぷりはまる人がいる。その人たちは世界観を考察し、過去に何があったのか、これから何が起こるのかを予測したりする。メタい話をすれば、アプデで実装される可能性があるものだとかも考察するらしい。
「じゅんぺーさん。以前の配信で興味深いものが見れました。感謝するわ。炎龍人なんて聞いたこともなかった。龍の存在がいるのは知っていたけれど……」
「新たな考察のテーマを与えた感じですか?」
「ええ。考察のし甲斐がありそうなの。今ここに来たのはその炎龍人に関する何かがこの下水道にあるという情報があってきたのだけれど……」
炎龍人に関する何か、ね。
それは気になるな。……よし。
「罪と罰、悪いけど私が出演するのはここまで。ごめんね」
「いえ! 急にお願いしたので仕方がないです! ありがとうございました!」
「視聴者のみなさんも突然抜ける形ですいません」
『気にするな!』
『俺もものすごく気になる……。動画上げるのかなヒステリアさん』
炎龍人に関する何かがあるのだと聞いたら黙っていられないだろうに。




