汚物は消毒だ
翌朝はまず王都に向かうことにした。
王都行きの機関車に乗っていると、通知が届く。フレンドからメッセージが届いたとのこと。
メッセージを送ってきたのは賽河原 罰目……。罪と罰の片割れだった。
[じゅんぺーさんおはようございます。
今、暇でしょうか?
王都で少々手を貸していただきたいモンスターがいまして、お暇ならば手伝っていただけると幸いです。
申し訳ありませんが、受けていただけるのなら9:00までに王都のせせらぎというカフェに来ていただきたいのです。
もし暇でないのならこのメッセージは無視して頂いても構いません]
て、丁寧な長文……。
要するに手伝ってほしい魔物がいるということ。まぁ、今日は予定もないし行こうかな。
機関車は王都につき、私はさっそくせせらぎというカフェに向かう。
今の時刻は午前8時57分。約束の時間までもう少しだ。
「じゅんぺーさん!」
「おっす、罰目ー。罪子は?」
「今来るはずです!」
「おはよーでーす……。っと、じゅんぺーさん! おはようございます!」
「おはよう、罪子」
私はとりあえず席に座った。
コーヒーを注文し、詳細を聞くことにする。
「んで? 手伝ってほしい魔物って?」
「えっと、昨日、私が受けたクエストなんですが」
と、クエストの内容が書かれた紙を見せてきた。依頼人は王国騎士団で。
王都に住む男の子が下水道で何かを見たと言うらしく、その何かを調査してきてほしいとのこと。
何かとはまた曖昧だけど、男の子が何かって言ったんだろな。
「これ、魔物出るクエストか」
「だと思うんですよね……。王都内に魔物が出るなんて思えないですけど……」
「まぁ、見に行ってみようか。配信はするの?」
「はい。昨日配信する告知をしたのでしないわけにはいかないのですが……」
「オーケー。じゃ、さっそく始めようか」
罰目はカメラを回す。
今更触れるが、カメラは丸い鳥のような見た目をしており、自分で飛んで私たちを撮影してくれるという感じだ。
もちろんこのカメラに攻撃は通らない。
「こんにちは。罪と罰の罰目でーす!」
「罪子ですわ」
「じゅんぺーですの。三人合わせてー」
「罪と罰と純情……って、合わせてじゃない! また、コラボして頂けることになりましたー! とは言っても、つい先ほどクエストを手伝ってほしいって頼んだんですけどね」
『いきなりでも出てくれるじゅんぺーの懐の深さよ』
『楽しみに待ってました』
私たちは適当な話をしたところで、王都の下水道に向かうことになった。
下水道の上には橋がかかっており、その橋の近くに降りるためのはしごが架けられている。
はしごを降りて、下水道の前に立つ。声が響く。
「流れてくる水も汚いですわね……。落ちたくないですわ」
「流石の私もこれは躊躇するね。流石に」
「人がいるから、なんでしょうね。とりあえず進んでみましょう」
私たちは下水道の中を進んでいく。
下水道は灯りが灯っており、明るかった。先へ進んでいくと、私たちは顔を顰める。
というのも。
「なにこれ、ゴミ?」
「ゴミだね」
「不法投棄はいけませんのよ!」
目の前に広がるゴミの山。
ゴミの山が行き先を完全に封じており行き止まりになっているようだ。
「ゴミがあるだけでモンスターはいなさそうだね」
「ですわね。何かを見たというのは見間違いだったんですわ」
「おかしいなぁ。敵探知スキルではここら辺で反応してるんだけど」
「敵探知スキル?」
「近くに魔物がいることを教えてくれるスキルなんです。ここら辺で反応があるんです」
「となると、やっぱ何かがいる、のかな」
その時だった。
下水道の水が迫り上がってくる。だがしかし、私たちを包み込むことはなく、だんだん人の形になっていった。
「これが魔物かよ!」
「下水道と同化していたからわかんなかったんですのね!」
「えーと、名前はヘドロボウズ! でもこれ一体? 複数反応が……」
「罰目! 危ないですわ!」
と罪子が叫び、罰目は飛び退くと、ゴミが動き出し、殴りがかかっていたようだ。
「それもか」
「名前はダストゴーレムっていうみたいです!」
「ヘドロボウズにダストゴーレム……。汚い魔物たちだな。汚物は消毒だ!」
私はしょっぱなから大技を披露する。
以前手に入れた忘却の雫を使う。が、この技は溜め時間があるらしく、1分ほど逃げ回らないといけないようだった。
「罪子、罰目! 1分ほど時間稼ぎ任せた!」
「稼ぐだけでいいんですのね!?」
「わかった。やってみます!」
この技の試し打ちだ。




