退路はふさがれた
二人の父親が酔いつぶれ、ぐーっと寝始めた。
私はレンタカーで来たことを思い出し、店に連絡を入れて、追加料金を支払うので伸ばしてほしいという旨を告げる。明日の朝まで借りることにした。
「いやぁ、結構飲みましたね」
「お父さん……」
「んだらぁ、すんげえ飲み会だったべなー。またじゅんぺーさんの料理くいてえー」
「暇があったらまた顔見せに来るよ」
私は飲んだ空き缶を片付ける。
「ここらへんで民宿ありますか? 泊まれるところでもいいんですが」
「うちに泊まって行ってもいいですよ。部屋はありますし、主人も許してくれるでしょうし」
「いいんすか?」
「どうぞどうぞ」
ならありがたく。
私はソファに深々と座り込む。二人を雇うことは成功した。個人的な願望だったけど、二人とやれるようでよかったよ。
私には、ミツキ、ウヅキのような友達なんていないから。友達なんて少ないから私は。
「ねぇねぇ美月ー。見てみて。じゅんぺーさんやっぱすごい人だった」
「んだぁ? チャンネル登録者が200万……200万!? んだらぁ多いべ!?」
「その200万人のひとにみられてるチャンネルに私たち出るんだって!」
「恐れ多いべー……。なんだか怖くなってきた」
二人はスマホを見ながらそういう会話していた。
「どこでわかるの?」
「ほら、動画開いたらアイコンの隣にチャンネル登録者数って書いてあるじゃん」
「あら、ほんとだ。200万人の人がみてくれてるのねぇ」
「動画もちょこっとしか投稿してなくて、ほとんど配信だけでいきました。私のようなケースはほとんどないですよ。ゲームは人によって良しあし変わりますし、ゲームの配信だけでそこまでいくというのは基本的にありません」
「そうなのねぇ」
そもそもゲームだけで200万人いこうなんて無理がある。
超えてる人たちって基本的に日常的な企画を立てて、○○してみた!とかあげてやっといけるようなものだ。
私の場合は本当に異質。
「一応、広告で収益とかは出してるんで、配信や動画だけでも生活はできてますが、私のような人は本当に稀ですから……。伸びるか伸びないかは運ですし」
「結構厳しい世界なのねえ」
結構人気YeyTuberの人の動画は基本的に視聴数も安定するけどね。
「あと、これ。昨日雇うかもっていったことがもうネットニュースになってます」
私はニュースサイトを見せると、じゅんぺー、チームになる?という見出しで記事が書かれていた。
じゅんぺーは二人の女子高生をバイトとして雇いともにゲームすること、それに関する世間の反応ということも書いてある。
世間の反応は。
『俺も雇われたい』
『月30万はたかすぎない?』
『女子高生二人の前ではさすがにマゾは息をひそめる、よな?』
なんて書かれている。
「ニュースになってるんだ! 私たち……」
「なんだかもう引き返せねえとこまできちまった感があるべ……」
「まぁ、もう退路は封じたからね」
もうつぶやいておいた。
先ほど、つぶやいたツイートはものすごくリツイートされているので通知が来ないようにしているが、もう1万リツイートをこえたのだった。
リプも結構来ており、二人の配信登場を楽しみにしている様子。
「二人ともSNSやってる? フォローしておくよ」
「あ、はい!」
「アカウントだけなら作ってるべー。あんましつぶやいてねーけどなぁ」
「いいのいいの。とりあえず、フォローしておくからね。変なDMとかもくるかもしれないけど、むげにしたりしないで、きちんと落ち着いて対応とかしてね。嫌だったらDM開放しないのも一つの手だよ」
「解放しないでおこ……」
「んだなぁ」
私は二人のアカウントを教えてもらい、フォローしておく。
そして、二人のTwitter垢と私のアカウントでつぶやいた。変なことはしないようにとも一応釘はさしておく。
「いろいろと下準備はオーケー。ただ、配信できるのは2日後、かな。その日、二人にも出てもらいたいけど大丈夫?」
「大丈夫です!」
「いけるべ~」
「おし、じゃ、2日後、頼むよ」
2日後に二人はデビューだ。




