二人の親たち
のどかな田園風景が広がる田舎。
私はとある民家に訪れていた。岐阜県にある村で、ミツキ、ウヅキはこの田舎町に住んでいるとか。
レンタカーを走らせ、教えてもらった住所にいくと、両家のご両親とそれに挟まれる形でミツキとウヅキの姿が。
「どーもどーも。遠路はるばる……」
「いえ。こちらこそお話を聞いていただけてありがとうございます」
「まずあがってください」
「はい」
私は家の中に招かれ、入っていく。
対面で座り、私の前にお茶が差し出された。
「あなたの動画? は拝見させていただきました。マゾヒスト、なんですよね?」
「まぁ、オープンにしてますから。もちろん場はそれなりに弁えます」
見たんですか、私の動画。
「その、うちの娘に出てほしいというのは何故でしょう」
「私が二人とやりたい、と思ったからです。失礼な話ではありますが、YeyTubeというのは見た目の良し悪しで売れる売れないが決まるわけではないんです。なので、見た目が可愛い二人を使えば売れる!という魂胆は一切ありません」
「世知辛いのねぇ……」
と、ウヅキのお母さんであろう人が煎餅を齧る。
「YeyTubeには毎日、動画が多数投稿されます。その多数の動画から見つけ出してもらえるのは相当幸運なことです」
「そうですね。農協もアカウントは作ってるけど動画は伸びませんから。伸びるコツとかはあるんですか?」
「農業というコンテンツは大多数がそこまで調べませんからね……。一つの案としては、人気アニメとコラボすること、人気YeyTuberなどを招いて紹介してもらうことでしょうか。もちろんどちらも費用はかかりますが……」
「そうですか……。費用が……」
「あなた。今らその話じゃないでしょう。動画を撮るということはうちの娘が全世界に顔バレするってことですよね? 変なイタズラはされませんか?」
「有名になってくるとされますね。私ももちろんアンチと呼ばれる方がおりまして、アンチの中に嫌がらせをするような輩も少なからずいます」
有名税とはそういうのもついてくると受け入れるしかない。
「ただ、もちろん法的措置はとれますし、法的措置をとる場合、その費用もこちらが負担します」
「……ならいいんですが」
「おう、美月! 有名になれるぞ! よかったな!」
「そういう話じゃないでしょう」
「顔が出るからって有名になれるとは限らないんじゃないですか?」
「そうか……」
なぜがっかりするんだろうか。
「私はそれなりに有名ではありますので、一応インターネットには名前は残るとは思います」
「よし、美月! やっていいぞ。父さんが許可する」
「いいんか!? やったぁー!」
「ねえ、お父さん、私も……」
「うーーん……」
「もちろん、私が配信する動画内で育てられている作物とかは紹介できます。一応、影響力はあるつもりではいます」
「魅力的な提案だな……」
「ねーえー!」
ゆさゆさと父親をゆするウヅキ。
悩んで腕を組んでいる父親。揺らいでるのかな。
「その、汚い話にはなりますが、月30万はなぜですか?」
「二人には説明させて頂きましたが、全世界に顔がバレること、少なくとも私というコンテンツで一気に名が広まること、美月さんに関してはゲームで本名プレイしてるので昨日のうちに少し広まってることがあり、月30です。ウヅキさんももしかしたら本名かもしれませんが」
「……私の場合は名字だな」
「本名ですね」
ウヅキという名字らしい。
「有名になるということは、多種多様の人間に顔がバレるということです。仮面などをつけてもらってもいいのですが、昨日のうちに顔バレしてるので意味がないんです」
「そうかぁ……」
「だ、だめ? お父さん」
「……わかった。いいだろう。ただし、娘のことを守ってくれることが条件です。ゲームに関しては私も家内も疎い。よくわからないので、あなたに任せるしかありません。信濃が泣いて嫌だって言った時にはすぐにやめさせます」
「わかりました」
「それと……うちの町のものを紹介して頂けると嬉しい」
「いいですよ。この後買って帰って飲みながらレビューします」
一応酒飲み雑談配信もしてるし。
「流石に酒飲み雑談配信は二人は誘えませんね」
「じゅんぺーさん東京だもんなー」
「……酒はどれくらい強い?」
「強さですか? まぁ、世界一度数があるお酒も大丈夫なくらいにはザルです」
「……今から飲まないか?」
「いいですね。台所貸していただければおつまみ作りますよ? 今からコンビニいっておつまみを……」
「飲むんですか! 俺車出しますよ! 昼間から飲む酒もいいもんですなぁ!」
「やっぱりこうなった……」
「私、焼酎がいいです」
「お、いいですね。飲みましょ飲みましょ」
「俺、野菜とか収穫してくる。酒に合うつまみ、作ってくれますか?」
「いいですよー! 料理得意なので」
私はとりあえずコンビニに材料を買いに行こう。
美月の父親に車を出してもらい、コンビニに向かうのだった。




