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雇う?

 私は黒いゴシックドレスのような格好をしている。


「これこれ! いいねえ、可愛いでしょ?」

「可愛いです!」

「んだなぁ。ふつくしいべ」


 一時間かけて、ようやく交換まで漕ぎ着けた。

 1000ポイントって割と疲れる。まじで敵倒しまくった。これで私はイベントとはおさらばかもなー。いや、ガチャ残ってるけど。


「もう夜も遅いし、寝なよ。夜更かしは美容の大敵。君たち可愛いんだから」

「か、かわ……」

「んだんだ。ウヅキはモデルさんみてえで可愛いべ」

「そ、そういうミツキだって可愛いでしょうが!」

「いやいや。こったらめんこくねえ女他にいねえべ。訛りもでちまってるしよぉ。わたすはモテたためしねーし」

「うーん、自己肯定感が低いね」


 ウヅキ、ミツキどちらも見た目はいい方だ。

 だがしかし、ミツキは可愛くないと思い込んでいそうな節がある。なんか闇があるのか?

 まぁ、そこは私が足を踏み入れるべきではない。


「そうなんですよ。ミツキったら私の引き立て役だって思ってる節あるんです。女の子みたいな妄想するくせに……」

「大変だね」

「自己肯定感が低すぎるのも考えものですね。私も可愛い、あなたも可愛いで生きていけたらミツキも楽なのに」

「まぁ、そういう人間だってことだよ。めんどくさくない人間なんていないから」

「そうですね……」


 ヒソヒソと話していると、首をかしげるミツキ。


「なに話してんだ?」

「いや、なんでもない。ミツキ、もう夜遅いし私ログアウトするよ。眠たいしね」

「そっか。ならばわたすも。じゅんぺーさん、あんがとござーした」

「ありがとうございました。また、よろしくお願いします」

「うん。またね」


 私は手を振って見送った。

 礼儀正しくていい子だったな。


 私もログアウトするために街に戻る。

 そして、ログアウトしようとしたが。


「……配信、しよかな」


 どうも配信したい。

 私は配信を始めた。すると、コメントが書き込まれ始める。


『ゲリラ配信?』

『なんか配信してる』

『間違いか?』

「いや、ちょっとやりたくなってさ。嬉しいことあったから」


 私はニコニコと。


『なんか服装変わってる!』

『初期装備縛りはどこやったんだよ』

「これ互換装備だよ。見た目だけ見た目だけ。これ装備一覧ね」


 私は装備を見せると納得したようだ。

 さっきの子たちは是非とも話しておきたい。嬉しいことは共有すべきだ。


「さっきすんごいマナーがいい子とやってたんだよ」

『マナーいい奴いるの?』

『そりゃいるだろうけどそんなに?』

「獲物とられたところから始まったんだけどさ、とられて少しムッてなったんだよ。そういう横取りは暗黙の了解というか、そういうのあるでしょ? 勝てる相手を取るのはダメって。そういうのかなって思ってたんだけど、ばりっばりの初心者でさ。ネットもやったことなさそうな子だったの」


 本名プレイであることがネット初心者である可能性は非常に高い。

 今のネットは本名など晒すのは勇気がいる行為で、小慣れてくると本名なんて晒さない世の中だから。


「ものすごく謝ってくれてさ。で、ネットリテラシーとか教えてたわけなんだけど、幽霊でビビったりしてめちゃくちゃ可愛かったんだ」

『幽霊怖い系女子?』

『守ってあげたい』

「めっちゃたくさんの地方の方言が混じった子でさ。フレンドになったんだよ。めっちゃ可愛いから許可もらったら一緒に撮って……」


 と、話している時。


「じゅんぺーさぁーん!」

「あ、噂をすれば」


 なぜかミツキと、ウヅキが走って戻ってきていた。


「やっぱお詫びしねえとと思って! わたすたちが集めたポイントで交換したんす。受け取ってくだせえ」

「やっぱ、お詫びしないと落ち着かなくて。ログアウトしようとしたんですけど」

「今配信中だけど」

「配信?」

「配信って動画ですか?」

「そ。私、配信者なの。じゅんぺーって調べてもらえると出るよ。ホストにしてあげよっか」


 私は二人にもコメント欄を見せるようにした。


「わ、チャットが視界に入ってきた」

「ほへぇ。こんなこと出来んだなぁ」


 二人は配信初めてらしい。


「自己紹介しようか」

「あ、はい! 私はウヅキです。この子の友達です」

『可愛い』

『高校生くらいかな?』

『可愛い』

「可愛いですよね! 私可愛いんですよ。はい、次ミツキの番」

「あ、わたすはミツキっていう、です! よろしくおねげえしやーす!」

『方言萌える』

『初心で可愛いね』

『JKって見た目いいとなれない職業なんだ……』


 コメント欄は大盛り上がりだ。


「見てくれる人多いんだなぁ。じゅんぺーさんは綺麗だし当たり前だべな」

「そうだね。可愛い人のところにはやっぱ人は集まるよ」

「私はそれだけじゃないんだな。ま、たまにこうやって三人で配信しようよ」

「配信ですか?」

「なんならバイトとして私に雇われてもいいよ。月20……いや、30だす。もちろん、気分で出たいとか決めていいし、用事は優先していい。どう?」

「えっ」


 私の提案に二人は固まっていた。


「あとで連絡先教えてもらえるかい? バイトするんだったらまず親の許可は必要になるけどね」

『マジで雇うつもりで草』

『いろいろと気をつけろよ二人とも』

「あと、そうだな……。受けるんだったら私のことを教えてあげる。どん引くと思うけど」

「お、親と話し合ってみます?」

「わたすも……」

「もし、私の顔が見たいっていうんだったら後で待ち合わせ場所とか個人的に教えて面接でもしようと思う。高校生で30万は正直怪しいと思うけど、私はそういうのはしない。ただ、全世界に顔を見せることになるし、切り抜かれもすると思う。そういうのを含めて月30万。少ない?」

「……受けたいけど、やっぱ親の許可いりますね」

「んだなぁ」


 だろうね。

 二人はまだ未成年。親の許可がないとダメだよなー。


「今日は配信悪いけどもうやめるね。もしかしたらメンバー増えるかもってだけだから」

『乙乙〜』


 私は配信を切って、二人と話をすることにした。








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黒猫は眠らない
新作です。VRMMOものです。
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