大量発生
イベントが開始された。
私は一度機関車に乗り、始まりの街ルラロンドに戻ろうとしていた。今度こそ何もないといいのだがと願っている時、それは起きた。
列車が急に止まる。そして。
『魔物の大量発生を確認いたしました! 乗客の皆様は速やかに列車から降り、走って逃げてください、当機関車は後退できません、繰り返します……』
魔物の大量発生?
私は外を見ると、前方に大量の魔物がいるのがわかった。私以外のプレイヤーも機関車から身を乗り出して魔物を確認している。
NPCたちは急いで走って後ろに逃げていた。
「しゃあない。戦うしかないかな」
私は双剣を構えた。
機関車から降りて、私はとりあえず単身で突っ込もうとすると。
「一人で突っ込むなよ、じゅんぺー」
「おろ? たっつんじゃん。なんでいるの?」
「そりゃゲームしてるからだよ! 俺も行く」
「手伝ってくれるの? そりゃありがたい」
私の隣にはたっつんと呼ばれる人がいる。
職業はプロゲーマーで、違うゲームで一緒にチームを組んで大会に出た経験がある。普段はなにしてるのかはさっぱり知らないけど。
たっつんは槍を好んで使うプレイヤーだ。
「じゅんぺー、なるべく多く倒してくれよ!」
「そっちも多く倒してね」
私は双剣で魔物を切りつける。
魔物の攻撃をよけ、カウンターを食らわせる。さすがにこの数は喋っている余裕もない。気を抜いたら攻撃を受けて私は死ぬ。
そもそも防御なんて私には一切ないし。
「俺らも手伝うぜ!」
「おう! 助かる!」
「経験値にもなるし手伝わない選択肢はないよな!」
と、ほかのプレイヤーも魔物の討伐に来てくれた。
私は双剣で次々魔物を倒していく。敵の攻撃をかわしつつ、攻撃を。被弾なんてしたら私は死ぬからマジで集中しないとな。
そして、十分後にはすべて倒し終わっていた。
「じゅんぺー、お前さすがだな」
「ふいー」
私は一息つく。
全部倒し終わって、ちょっと疲れた。
「二人とも強いですね」
「ん? ああ、俺ら一応プロゲーマーだから」
「そうなんですか?」
「俺はともかく、こいつは知らないか? YeyTubeで配信している奴なんだが」
「私知ってます! じゅんぺーさんですよね? ギルドに加入申請させていただきました!」
「ん、ありがと……。ちょっと今待って……。さすがにこの量は疲れた……」
被弾してはいけないという緊張感が私を疲れさせた。
「ふぅ……。視聴者さん? 見てくれてありがと。これからも見てね」
「はい!」
「なにこの熱烈なファンぶり……」
仲間であろう男の人が引いていた。
私ってなぜか意外と女性視聴者が多い。なぜなんだろ。
「見た目も麗しくて強いって素敵……」
「ありがとう」
「あ、ああ、あの、握手してください……」
「いいよん」
私は手を差し出した。
ファンの女の子と握手を交わす。
「お前、なんか女性人気あるよな」
「なんでなんだろうね」
「そりゃ見た目がいいからですよ! 女性だってかわいい女の子好きです!」
「そうなの? 私美容系とかそういうのじゃないし女性は本来興味ないんじゃない?」
「いえ! あまりにも美人だとやっぱ女の子も見たくなるんです!」
そういうもんなのかな。そこらへんはよくわかってない。
「お前ってマジで性癖以外は完ぺきな女だよな」
「そうです!」
「性癖も認めてこそのファンだよね?」
マゾヒストで何が悪い。
「とりあえず、機関車に戻って始まりの街に戻ろうぜ……。イベントが刻一刻と過ぎ去っていく……」
「まだ時間あるしゆっくりでいいだろ」
「私は今週スケジュールがやばいの。明日とかは現実のほうで用事あるし」
「人気配信者は大変だねぇ」
「本来はこういうのが普通なんだよ……。私が異常なだけ。本来はチャンネル登録者数200万いくひとは動画毎日投稿は当たり前だしゲームしてる暇なんてないからね?」
私は基本気まぐれだし。
「イベントに割ける時間が私はそこまでないから急いでるんだよ。わかったらさっさといく!」
「はいはい」
今週は予定がびっしりあるからな。




