雑談配信
ギルドを立てたことは瞬く間に話題となり、視聴者も入りたいという声があった。
私は雑談枠を取ることにして、今現在、雑談配信をしていた。
『ギルドって俺らでも入れる?』
「んー、入れる入れる。ただ、それなりの制約はするよ。とはいっても、迷惑プレイは禁止、迷惑プレイをしていたことが発覚しだい、私の手で脱退させるってのが条件」
『ギルドの名前は?』
「チームマゾヒスト?」
『え、やだ……』
視聴者の人からやだという声が聞こえてくる。もちろん冗談だよ。マゾヒストなんて名前にしたら誰も入ってきたくないでしょうに。
名前か。名前はな……。
「名前まだ決まってないんだよね。名づけ苦手なんだよ。私の活動ネームだって小さいころからのあだ名だし名づけセンスが皆無なの私って」
『じゃあ俺らで考えようぜ!』
『白豹会』
『栄光の架橋』
『フリーメイソン』
『マジョリティ』
と、名前の候補をたくさん提案してきてくれたが、どれもピンとくるものがなかった。こういうギルドの名づけって意外と難しくない?
私も私でネットとかでかっこよさげな言葉を調べてみる。
「あ、これなんてよさげじゃない? ナイアルラトホテプ」
『ニャルラトホテプwww』
『たしかにじゅんぺーが混沌の使者みたいなもんだしいいかも』
『ギルド名ニャルラトホテプ?』
になるかな。
私はギルド名をニャルラトホテプにすると宣言した。混沌から這い寄りし者であるといわれている私にはちょうどいいかもしれない。
「じゃあ、ギルド名も決まったしあとはのんべんだらりと飲みながら雑談でもしてきましょか。質問とかあれば答えるよん」
『マゾに目覚めたのはいつ? きっかけは?』
という質問が来た。
「目覚めたのは小学生のとき。きっかけは殴られたことが気持ちよかったって感じたこと」
『自分でもこれはやばいなってエピソードある?』
「高校生の時、クラスメイトに頼んでいじめてもらってた」
『草』
『wwwwwwww』
『これだからいじめはなくならないんだよwww』
いろんないじめを受けて、多分クラスメイトもものすごく楽しんでいたと思う。無視とかはまだしも、机の上に花瓶を置かれて献花されてるみたいになってた時とかちょっと興奮したよね。
「先生が結構真面目ないい人でさー。いじめられてる私を見て、ほかの生徒にいじめはやめろとか注意したんだよ。それについては本当に申し訳なかったし、ほかの生徒が『じゅんぺー自身がいじめてくれって……』って弁明しても自分からいじめを望むバカはいないと思ってるからかやめろって注意されていじめられなくなっちゃって」
『当たり前だァ!!』
『むしろ今のご時世にそんないい先生いるの?』
『見て見ぬふりとかしてもいいのに無視しないあたりマジでいい先生じゃん。当たりの先生なのにじゅんぺー自身が当たりじゃないと思ってしまってるwww』
「で、いじめられてたことが結構な大問題にまで発展しちゃって。いじめっ子の親が学校に呼ばれるわ、私の親にまでいじめられてたことが発覚するわで。いや、親は私のマゾヒストは知ってたんだけど」
懐かしいな。
「で、全校集会が開かれて、校長がいじめが起きていたことを話したんだけど、さすがに親まで呼ばれて私自身、私が頼みましたって言わなきゃいけないじゃん? じゃないとマジで恨まれると思ってさ。勝手に登壇してマイクを借りてさ。自分からマゾヒストでいじめてもらってたって大声で言ったんだよ」
『草』
『馬鹿じゃないのwwww』
『全校生徒に性癖をさらけ出すって相当勇気いるぞwww』
『まじでオープンすぎるだろお前www』
「みんなぽかんとしてたけど、校長が言わされてるんだねって勝手に同調して。マジでマゾヒストで、私がマジで頼んだって言ったら、なんか微妙な雰囲気で全校集会終わっちゃって。マジで叱られたよね。クラスメイトはみんな大爆笑してたし、全校生徒から忌避な目で見られるぞって笑われたし、心地よかった」
『ばかwwwwwwww』
高校時代は三年間ずっと針の筵に座らされていた感じだったのでものすごく気持ちよかったのを覚えている。
もちろん、私のことをよく把握しているクラスメイトとは仲良くしていたが、マゾヒストとはそこまで仲良くしたいと思われなかったらしくほかのクラスメイトとはかかわりがない。
『まじであの時は笑った。なんで自ら暴露したんだか』
「ん?」
あ、サンキチ来てる。
「サンキチ来たんだ。やっほー」
『サンキチ??』
『サンキチ?』
「私のリア友。高校時代の友人で、高校時代の私を知ってるやつ」
『話した以外のやばいエピソードもいくつかあるよ。それを私の口から言うのはあれだしやめておくけど』
『話せ』
『話したほうがいい』
「いっとくけどこれ雑談配信で私の暴露大会じゃないからね?」
みんな勘違いしてない?




