ギルドを立ててくれ
今日はいろんなことがあったがいざ王都!
私は駅員に捕縛した強盗を引き渡し、駅から一歩出てみた。石レンガ造りの建物が並び、奥に見えるのはきっと王が鎮座する王城だろう。
夜でも王都は栄えているようだった。
「ふおー、すっげえ」
私はとりあえず王都の探索へレッツラゴー!
マップを見ると、王都のすぐ後ろには海があるらしい。水の都であるためか、王都には水路が通っている。水路には船が浮かんでいたりして、船で行き来する方法もあるようだ。
「夜だとちょっと味気ねぇー……」
そんなことをぼやきながら歩いていた。
するとその時、私に剣を振り下ろしてくる男たち。私は双剣で受け止める。プレイヤーのようだが……。
私は二人を突き放し、双剣を構えた。
「いきなり襲い掛かってくるって結構な挨拶じゃない?」
「兄貴、やっぱじゅんぺーさんだよ」
「そうだな弟よ」
「兄弟?」
「ああ」
二人は剣をしまう。
私は警戒しつつ、目の前の兄弟の話を聞く。人に話しかけるのに剣をふるって相当いいご挨拶じゃないですか。
「改めて、俺は兄のキムチ」
「弟のナムルっす」
「まずは謝らせてほしい。挨拶が攻撃になったこと」
と、深々と頭を下げる。
謝ったからといって許されるわけじゃない。今の私は相当イライラしてるんだから……。この兄弟は見たことがない。配信者……という線もぬぐえないが、一般人か?
「えっと、俺らはコリアン兄弟っていう名前でVTuberをしてるんす。チャンネル登録者数も結構いるんすけど知らないっすか?」
「私そういうVTuber系は興味がほとんどないから見てないし、知らないな……」
「ちょっとショック……。まあいい。じゅんぺーさんはやっぱり腕が立つようだな」
「腕が立つじゅんぺーさんにお願いが……」
「どうせギルドじゃないの?」
「よくわかったな」
やっぱりギルドの勧誘か。
私は誰かの下につくつもりなんて……あるっちゃあるけどそれは物理的のほうだ。誰かの椅子になりたい……。踏まれたいという欲望こそあるが……。
「私は誰かのもとに入るつもりはないよ。作るとしたら私がリーダーとなって、私がコラボするような相手を集めてとかそういう感じになるかなぁ」
「そう! そのお願い! じゅんぺーさん、ギルドを立ててリーダーになってくれないか?」
「リーダーに?」
「そう! ものすごく人気の配信者であるじゅんぺーさんのギルド! 俺らだって、俺ら以外だって入りたい人はたくさんいると思う!」
ふむ、ギルドを立ててくれというお願いか。
まぁ、このまま勧誘ばかりされるのもうざったいし立てておいたほうがいいかもしれないな。私はしょうがないので立てるということを伝える。
ただ、作るにあたって制約を設ける必要がある。
「私のギルドは一応ルールを設けるからね。ギルド長だからだれを抜けさせるか決める権限はあるし……。そうだな……。炎上騒動を起こして、私たちの評判を下げる行為、禁止された行為や犯罪行為を犯した人は強制脱退させることにしようか」
「き、きびしいんすね……」
「そりゃそうだよ。一人が炎上したら同じギルドである私も芋づる式に炎上するかもしれないという危険性だってあるわけだ。そういうかもしれないというのは動画投稿者において重要だよ。万人受けするわけじゃないけど、少なくともそういうのを守らないと視聴者はすぐにいなくなる」
「ストイック……」
「別にふつうだよ。なにも私は聖人君子でいろって言っているわけじゃないし、炎上理由も見極めて、それに対する対応で脱退かどうかは決める。私にギルドを立てろっていうんなら、私はこのくらいする」
一人が暴言で炎上したとしても、私はそれを脱退理由にはさせない。
ただ、その後の対応で決めることになる。沈黙を貫くのならばまぁ、よし。他人のせいにした時点で脱退とするか。
ギルドは助け合いの場だからね。そういう他人の助け合いを妨害するのはNGだ。
「私がギルド長になったらそういうルールは設けるよ。何事においてもルールってのは必要になってくるからね」
「あ、ああ。それでいい。俺らも入れさせてほしい」
「いいよ。じゃ、ギルド申請しておくかな」
私はリーダーで、こいつらのどちらかがサブ。
……いや、サブはまだ決めない。
「サブリーダーは、さすがに今決めれないな」
「……そっすね」
「あわよくばサブリーダーって考えだったんでしょ? 甘いよ。私はまだ君たちのことをよく知らない。知らないで判断するのはリスクが大きい。サブリーダーは私が信用できると思った人に任せようかな」
「信頼されるよう頑張るっす!」
「ナムルさんはものすごく素直でいい人だね」
嫌味っぽく私は言ってあげた。
これ、性格悪い人だったらすぐにこういうのをSNSでつぶやいて炎上させようとする。私はそれの対応で見極めることにしよう。




