機関車の中で
警察から解放されたのは午後7時くらいだった。
まっすぐ家に帰り、私はとりあえずゲームにログインしてゲーム内で鬱憤を晴らすことにした。さすがにね、殴られて気持ちよかったけど怪我までさせておいて反省してないのはいかがなものか。
旦那さんは幸いにも真っ当な人だったから息を切らして警察署に来ては私に土下座して謝ってきたけど。慰謝料と治療費を相手が全額負担で落ち着いた。
「鬼時間も終わっちゃったしな……。しょうがない。とりあえず蒸気機関車に乗って王都に行くとしようか」
私は蒸気機関車の駅まで向かう。
古き良き蒸気機関車。SLというもの。石炭を原動力として動いているらしく、石炭もたくさん積まれている。
私は客室に乗り込み、座席に座る。いかにもレトロという感じがする。昭和だなんて百年近く前なのに、こうもいい雰囲気を出すとは。開発陣の中に昭和時代が好きな人がいるに違いない。
《まもなく、発進いたします。危険ですので、ドアの近くには近寄らないようにしてください》
機関車が動き出す。
こういった魔法世界で、こういう科学を見るのは何とも不思議な気分だ。魔法なんていうオカルトにこういったサイエンスがあるのはどうも気分が高まる。
「前のゲームはサイエンスファンタジーだったし新鮮味があるね」
SFと呼ばれるジャンルのVRMMOをこのゲームの前にやっていた。
機械世界に私たちは生きていた。この世界はただのファンタジー。ゲームの良さはこういったファンタジーを感じる面だ。
私はファンタジーを生きるファンタジスタだからな……。
私は車窓から景色を眺めていた時だった。
私の目の前に矢が飛んでくる。
「あぶなっ!」
「てめえら全員おとなしくしやがれ!」
と、弓矢と剣を持った男たちが私たちに剣を向けていた。
強盗……? そういうイベントあるの? 私はとりあえず機関車の説明を見てみる。この強盗イベントはまれに起きるらしく、強盗たちを倒して捕縛したら賞金がもらえるらしい。
稀に起きるイベントに今出くわすの?
「今日はいろいろと巻き込まれる日だな!」
私は双剣を構える。
「なんだテメェ! おとなしく……」
「しないっての!」
私はとりあえず腕を切りつけた。
男は剣を落とし、腕を抑える。剣を持ち外に放り投げた。
弓をしぼる男。
私は放たれた矢を左腕の剣でたたき落とす。
「なんだこいつぁ!」
「通りすがりの旅人」
私は座席下に置いてあったロープを手に取り、強盗二人をぐるぐる巻きにした。殺したらダメだと思うからこうやって捕縛して身動きを封じるだけしかできないが。
私は強盗二人を縄で縛った後、席に座りなおして窓の景色を見る。
《まもなく、王都~。王都~。ご降車の際は忘れ物がないようお気をつけてくださいませ》
そろそろ王都だ。




