興奮するな
居酒屋サンキチで。
「ファンタジーフロンティアって今CMとかでものすごい話題の奴だよね? やってんだ」
「そりゃゲーマーですから」
「俺もやってる。安生はやらないのか?」
「うーん。やりたいんだけどねぇ」
「悩んでるんならやったほうがいい。あれはお前も気にいるはずさ」
という会話をした翌日。
安生と芝崎はギルドを組んでいた。安生が初めてすぐにギルドに勧誘したらしい。展開はやいよ。もうちょいお互いの親睦を深め合ってやるものだろ。
だがしかし、安生……もとい、アンジョーはゲームにどっぷりはまったらしく、勧誘してから暇なときはゲームにログインしているようだ。
「まさかアンジョーがここまではまるとは……」
「もともとアンジョーはオタクだったしはまるといえば当然なんだけど、いかんせん顔がいいからアイドルかなにかと勘違いされてるねぇ」
「俺よりレベル高くなってるからなあいつ……」
芝崎……もといウィバルがそうぼやいた。
「それより……お前さんの配信見たけど……マゾヒストなのは知ってたけどあれほどまでかよ……。顔は美人なのに……」
「いやぁ。変態だっていったじゃん? 昨日受けた痛みはまだ忘れられない……」
昨日はでかいイノシシに突進されて吹っ飛んで死んだ。痛かった。けど気持ちよかった。あの快感はゲームでしか味わえない……。
やっててよかったゲーム。
「思い出してきたら興奮してきた……」
「やめろよ……」
「……ふぅ。で、話って何ぃ?」
「ん? ああ、俺らのギルドに入らねえかって話なんだが……。やっぱいい」
「入らないけど……いいってなんで?」
「変態はいらねぇ……」
「ひど!? マゾヒストだって立派な性癖じゃん! いろんな性癖がこの世にあるのにマゾヒストだけのけ者はひどくない!? のけ者って思うと……興奮しちゃう、けど! ご褒美か!? 私にご褒美を与えてんのか!?」
「もうお前怖えよ……」
入る気はないからいいんだけどね? うん。
「んぐふぅ……」
「お前本当にしゃべらなきゃ美人なのにな」
「……もうそれ以上喋らないで。ウィバルのサディスティックに興奮しすぎて死んじゃいそう。このサディストめ」
「俺はノーマルだっての! もう行くぜ俺は!」
「ああ、またな」
「また」
ウィバルの言葉攻めはまあまあよかったな。
興奮しすぎてしまったぜ……。興奮しすぎもよくないんだけどね。でもあれはウィバルが悪い。私が興奮するようなことを言うから……。
昨日は痛みで興奮できたけど最近、そういう興奮すること少ないんだからたまってんだよ……。




