同窓会 ②
同窓会では私は壁際でグラスに入れられたシャンパンをゆっくり飲んでいた。
「やっぱ美人は酒飲む姿も絵になるな」
と、来たのはサングラスをかけた男の人。
名前は……芝崎 初春だったかな。
「私を口説きに来たの?」
「学年一美人だったお前を口説こうなんて俺は出来ねえよ。話がしたいだけだ。お前さんは……画になるからな」
「そう?」
私の隣で壁にもたれかかる芝崎くん。
芝崎くんは会場の人たちを眺めてつまんなさそうにしていたのだった。
「同窓会に参加してみたのはいいが、マウント合戦だな……。俺の職業聞いたやつ全員笑うんだぜ」
「どういう仕事してるの?」
「画家。売れてねえけどな」
「へぇ。いい仕事じゃん」
「美人は性格もいいな」
「皮肉?」
「あいつらに対してのな」
私は酒を飲む。
画家、か。そういうのくだらないとは思えないな。私もそういう芸術家みたいな感じだし。YeyTuberも芸術家と同じようなものだしね。
「お前さんは何の仕事してんだ?」
「YeyTubeで配信者してます。これでも人気なんだよ?」
「ふぅん。ゲームとか実況してんの?」
「してる。今度一緒にファンタジーフロンティアってゲームやる?」
「ああ、それやってんだ。俺も今やってる。あのゲームはいいな。クリエイティブのいい参考になる」
そういう感じでゲームを楽しむ奴もいるか。
まぁ、自然豊かだったり建物もいい画にはなるだろうし、たしかにその楽しみもありか。
私は静かに酒を飲んでると、スーツを着て少しニヤついた男が近寄ってきた。
何話してんの?と絡んでくる。
「仕事の話」
「へぇ! 和平さんも仕事してんだ! どんな仕事か聞いてもいーい?」
「YeyTuber」
「ぷっ」
と、吹き出していた。
笑いに来ただけか。
「すまんすまん。笑うつもりはなかったんだが……。でも、やめた方がいいぜ? あれは成功するのはたった一割だし。もっと堅実に生きなよ。堅実に」
と、わかったようなアドバイスをしてくる男。
私は酒を飲み干した。
「アドバイスありがとう。ま、別にいいよ。堅実じゃなくたって。私はスリル、大好きだから」
「でも仕事は人生にも関わってくるんだよ? 動画投稿者とか実質無職じゃん」
「無職だと思ってくれててもいいよ。そうやって見下されるのも興奮はする。普段は」
普段はこうやって見下されるのも興奮するんだけどなぁ。
「でも必死こいて今の仕事に熱意を注いでるのを見下すやつになんか興奮しないな」
ムカつく奴だな。名前は鈴木だっけか。
「見下すのも大概にしてよ。私は今じゃそんじょそこらの上場企業勤めより金もらってるんだ。じゅんぺーって名前で活動してるから見てみなよ。変態である私を受け入れて見てくれる人がいるからさ」
私はグラスを置き、入り口に向かう。
後ろには芝崎と安生がついてきていた。どうやら二人も帰るらしい。
あー、久方ぶりに怒った気がする。帰りは居酒屋行ってやろうかな。
「おし、じゃ、改めて飲みにいこう二人とも! 奢ってあげる!」
「気前いいな。そこら辺の男より男前!」
「久しぶりにオタトークにでも花を咲かせるか? 同志よ」
「いいねぇ。行きつけの居酒屋があるんだ。そこで飲もう」
同窓会。これで雑談のネタは出来た。
見下してくる同級生。それすらも話題にしてやるよ。




