Parallel X Online from Japan
私は今現在、トウキョウにいる。
トウキョウといっても現実世界のトウキョウではなく、ゲームの世界のトウキョウだ。
まもなく発売を迎えるVRMMO、Parallel X Online from Japanというゲームのデモプレイをしていた。
三つの日本が交わった世界。科学の代わりに魔法が発達した魔法世界と、現代日本より科学技術が発展した未来世界、そして現代世界の三つが合わさった世界線。
トウキョウも、ホッカイドウも、オキナワもなにもかもが未来や魔法世界と混合してしまった世界。その世界を冒険するVRMMOだ。
始める世界線も三つから選べるようで、魔法世界、未来世界、現代世界の三つ。それぞれ特徴があるようで、魔法が使える魔法世界、未来世界の技術を扱える未来世界、そして、難易度ベリーハードな現代世界から。
デモプレイなのであまり深くは遊べないが、それでも変わり果てたトウキョウの姿を見るとちょっと興奮する。
マゾヒストはディストピアが好き。教科書に出るよ。
「っと、双剣の動きも順調!」
少しゲームから離れていたからな……。
ゼノにプロポーズして以降、籍をいれたり、引っ越ししたりでいろいろと忙しかったからな……。結婚したからには同居。ゼノも仕事場を引っ越すようでそっちの手伝いもしていた。
一軒家を建てて、そこをゼノの仕事場兼、私たちの自宅って感じになる。もちろん私のゲーム部屋もある。ゆくゆくはそこでゲームするし、実況もする。
まぁ、私たちのお話はいいだろう。今はゲームだ。
そういう忙しさもあったせいでちょっとだけブランクがあるが、動きに特に問題はないようだ。
ただ不満点を挙げるなら……。痛覚システムがまだないってところかな。ダメージ受けても痛くないの。デモプレイだから仕方ないかもしれないが、痛覚システムはマゾヒストにとっては大事なものなのだ。どのくらいかというと、エビフライにタルタルって感じ。
あと、ファンフロにはなかったシステムとして、つけれるスキルに制限がある。
ファンフロは無制限だったが、今作はスキルをつけれる数が決まっており、持っていることはできるものの、使用するにはスキルを変更しなければならないようだ。
そういうシステムもちょっとおもろいよねぇ。
「カツシカ区もこんな変わっちゃってまぁ」
私はカツシカ区を見る。
森におおわれており、出る魔物も魔法世界の魔物が多かった。マジカルエテ公とか。
「シンジュクとかは何も変わってなかったな。面積は広くなってたけど」
三つの世界が合わさったから国土も三倍。したがって区の面積も三倍。単純計算が過ぎるぞ。そういう計算ならホッカイドウだって県作れるくらいにはデカくなるだろ。というか、移動距離がやばいよな。
そして、異世界じゃない分、どこになにがあるかは基本的にわかりやすいし、専門用語もほとんどない。
通貨の単位も円だし、バイクとかいっても普通に通じる。そういうのは言い間違いもなくて、説明もしやすいからそこは楽。
ゲーム性もまぁまぁいいほうだし、私の総評としては60点。なぜ40点減点なのかは先述した通りだ。広すぎるし、移動方法ももっとしっかりしてほしいし、何より痛覚システムがないから。
痛覚システムがあれば20点は上がってたのになぁー! 勿体ないなぁー!
「そろそろデモプレイも時間か……。2時間程度じゃあまり探索できないな」
デモプレイは2時間と決まっている。
2時間探索したらまたリセットだ。これはまぁしょうがない。どのVRMMOも基本的にデモプレイは1時間か2時間だ。装備などは一式は揃えられた状態では始まるしな。
私は現実に引き戻される。
瀬野がコーヒーを淹れていた。
「デモプレイはどうだった?」
「そこそこ。まぁ、面白いとは思うよ?」
「君がそういうのならそうなんだろうな」
「そっちはどう? 原稿順調?」
「まったくもって問題はないさ。さっき建設中の我が家に行ってきたよ」
「どうだった?」
「よくあの家を作る資金を出せたなという感じがすごいな。東京の地価は高いだろう。僕が建物の代金を出したとはいえあの土地を買うのは結構値段がしたのだろう? 結構広い家で庭付きなんて相当だ」
「まぁ、土地は広いほうがいいからねぇ」
都心部だし、結構高級な住宅が並ぶ住宅街だったからマジで高かったが。多分私が生きていて一番高い買い物だったな……。
5億くらいしたからな……。1㎡でもものすごい値段したのにそれを結構な広さだからな……。マジで貯金額がごっそり減ったぜ。
まぁ、ほとんど買うものがないし、まだ金に余裕はあるが。それに、家賃とか考えない分、もうこれ以上家に消費することはほとんどないだろうな……。
「高級住宅街二軒空き家を取り壊して自分たちの家を建てる、か。僕たち大富豪だな」
「いまさら何を言うか。売れっ子漫画家と売れっ子実況者だぞ。広告収入だけでも結構な額だからな……」
成功しすぎてる感じなんだよね。




