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優先順位

 じゅんぺーちゃんの必死の抵抗は功を奏した。

 私が必死に戦って足止めしていると、黄金の魔人は何か焦ったように烏兎池の方向を向いたのだった。

 ゼノが烏兎池近くまで行ったから、その気配を察知したんだろうか。


 黄金の魔人は私との戦いの手を止めて、全力で走りだしたのだった。


「逃がすかよ! やっぱお前は封印されたくないから全力で止めにいくんだな! 私ごときすぐに始末できるから後回しにしたんだろ! やっぱ私より全然バカだ!」

「ウルサイウルサイウルサイウルサイ!!」

「今になって危機感を覚えて、優先順位を入れ替えたんだな!」


 ゼノ。

 早く投げ込んでくれ。もう抑えることは無理だ。この全力疾走、鋼水の糸を射出して食い止めているだけでもものすごく厳しい。

 踏ん張ってはいるが、私が現在引きずられている。力でかなわず、私を始末することではなく、封印を阻止しようとしているのに躍起だ。


「こうやって引きずられるのもちょっといい……」

『感じてる場合じゃねえよ』


 と、視聴者からのツッコミを受けた。

 そうだった。感じていたら敵を倒せないではないか。


 私は引きずられていると、目の前にゼノの姿が見えた。そして、それと同時に烏兎池の姿も見える。

 烏兎池は、相も変わらず透き通っている。


「ゼノ。投げ入れろ」

「了解だ」


 ゼノは黄金の塊を烏兎池に投げ込んだ。

 黄金の魔人はなンと池に飛び込んだ。金塊を手でキャッチするためだろう。こいつ自身が烏兎池に入っても問題はないようだ。

 だけど、キャッチされたらそれこそ困る。


 私は足腰に力を入れて、踏ん張った。ひもを引っ張り、少しでもこっちに引き寄せるしかない!


「お、重いぃ……!」


 黄金でできているだけあり、ものすごく重い。

 だがしかし……。私はここでヒーローになる。私は全力で、鋼水の糸を引っ張ったのだった。


「ふんっ!」


 と、ゼノは私の上に手を乗せる。

 そして、糸を私と一緒に引っ張り始めたのだった。


「ここまで来たら勝つしかないだろう!」

「最後の最後に綱引きで終わるのしまらねぇー……。それに、随分とあっけない気もするけど……。でも、これで終わりじゃい!」


 私たちは全力で糸を引っ張った。

 黄金の魔人の勢いが止まり、そのまま池に落下していく。呪われた黄金も、水しぶきを上げて、池の中に落ちていったのだった。

 すると、烏兎池が金色に光りだす。黄金の魔人は水面から顔を出すと、顔をおさえ呻き始める。

 「アァァアアアァァア!」という黄金の魔人の悲痛な叫び。黄金の魔人の体はどんどんと解け始めていく。


「っしゃあ! じゅんぺーちゃんの勝ち! ダメージとか一切与えられなかったけど頑張ってみるもんだね」


 正々堂々とバトルした感じはしない。

 ほかのゲームのようなラスボスを倒したという感じもない。随分とあっけなかった。が、仕方ないだろう。

 勝敗のつけ方は倒すより簡単なことだったからな。


「これで世界は救われた……。とはいっても、まだ天使の依頼とかあるんだけどそれはまぁ、おいおいやるとして……」


 目が覚めたら世界が終わっていた編、完結!

 いや、まぁ、倒したからといって世界がいきなり復興するわけじゃないんだけど。この壊れてしまった世界の修復は少し時間がかかるだろう。

 それまでは荒廃した世界の冒険とでも行こうか。











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黒猫は眠らない
新作です。VRMMOものです。
読んでもらえると嬉しいです。
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