世界が終わった理由
言い忘れましたが、そろそろ終わりそうです。
目が覚めたら、世界が終わっていた。
何を言っているのかわからないと思う。私もわからない。私は目の前の惨状にただ立ち尽くしていた。
私がログインできない一週間、何があったんだろうか。そう思っていると、ヒステリアからメッセージが届いていることに気づく。
『助けてほしいの、カンニバル森林の奥地に来れるかしら』
というSOS。
ヒステリアはログインしているが、これが送られてきたのは五日くらい前のことだ。私はとりあえずカンニバル森林を目指してキンシの背中に乗り向かっていく。
奥地のほうにつき、私は森林内部に入っていくと、何やら遺跡のようなものがあったが……。
「ようやく来たわね……」
と、少し余裕がなさそうなヒステリアが外に出てきた。
「どうしたのこれ。ログインしたら世界が終わってんだけど」
「私が説明するわ……。私もこんなことになるとは思ってなかったもの」
そういってヒステリアは私を手招く。
私は遺跡の中に入っていくと、少し広い空間に出たのだった。中央にはなにか台座のようなものがある。ただそれだけの遺跡。
「なにこれ」
「あの台座はこれを飾っていたものよ」
と、取り出してきたのは黄金に輝く物体。黄金の鉱石だろうか……。
「この世界の惨状、すべて私のせいなのよ」
「……どういうこと?」
「追って説明するわ」
ヒステリアは私が見つけた黄金郷に少し疑問があったらしい。
「あの黄金郷の魔物を倒したら黄金の武具がもらえるのはいいの。でも、それはあなたの黄金の武具以外に見たことがないの」
「……隠してるだけでは?」
「いや……王城内部にも侵入してみて確認したもの。そんなものは間違いなく国宝級のものになるのは当然だろうし、保管しておくのならそこしかない……。けどなかった」
「となるとあのドラゴンを倒してないってこと?」
「そう。倒していない。となると、あの空間から出られていない」
それがなんだっていうのだろうか。
「私が問題視していたのは出られていないこと。あったとしてでられていなかったのなら、どうやってあの暗号を残したというの?」
「あ……」
それもそうだよな。
たしかにどうやって残したかという問題が出てしまう。あの空間から出られず死んでしまった場合、あんな文献は残せない。
文献が残ってるということは生きて帰ってこれている、つまり私たちが見つけた黄金郷から黄金の武具を持ち帰っているはずなのだ。
「で、私が出した結論は……黄金郷は二つあった」
「しかないね……。本当に文献に伝えられていた黄金郷はもう一つあったと仮定したほうがいいか」
「で、今回その黄金郷はここ、この遺跡のことなのよ。ジパングっていうのはここの遺跡のこと」
「そうなの? でも黄金なくない?」
「その黄金がこれなのよ……。でも、これを好奇心で手に取ったのがまずかった」
「……というと?」
「この黄金の封印を解いてしまったから、世界は終わったのよ」
話が壮大すぎる。たかだか黄金でそんなことになるのだろうか。
「黄金ごときでそんなになる?」
「なるのよ。昔から黄金には魔力が宿るといわれているの」
「ああ、そういうのあるね。ピラミッドには黄金が眠っているけど呪われていて手にしたものに不幸が訪れるとかある」
「それ。この黄金もまさしく呪いの黄金だったのよ! 黄金の魔力が人々の欲望を刺激して、争わせたというの」
なるほど。
そういう呪いが込められていたのか。人々が争うように仕向けて、そしてあの崩壊した街が出来上がったというわけか。
「で、助けてって? それを封印したらいいんだから台座に戻したら封印できない?」
「試してみたけれどできなかったわ。封印はそんな単純じゃないということよ」
「じゃあどうやってまた封印する?」
方法が分かんないんじゃどうしようもないと思うが……。
「方法はなんとなく予想はついているのよ」
「予想?」
「あなたたちがみつけた黄金郷よ」
ヒステリアは黄金を私に渡してくる。
「あの池に投げ込めば封印されると思うの。でもまぁ……ムンシャドウのような魔物は沸いてくるでしょうけど」
「そうなの?」
「黄金の呪いが解除されて出てきた魔物があれだと考えたほうがいいの」
ムンシャドウの正体がこの黄金か……。
「黄金の呪いはまさしく厄災! これがあるだけで人々は争うし、持っている人物を強制的に狙ってくる」
「あー……助けを求めた理由がそれかぁ」
「そう。私は弱いから烏兎池までいけないのよ。じゅんぺーに頼むしかないの」
「おっけー。了解。もってきゃいいんだね」
やることが単純でよかったよ。
ただ、黄金の呪い、か。黄金ってやっぱそんなものなんだな。




