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お見舞い

 父の家から帰り、今度はいろいろと必要なものを終わらせていると一週間ログインできなかった。税金とかいろいろやっていかなきゃいけないんですよねぇ。ミツキとウヅキのもあるし……。

 それと、ミツキがそろそろ退院できるとは言わずとも、ゲームできる許可が下りたらしい。ミツキもあれから再発することはまだなく、元気に過ごしているのだとか。


 が、それは医者から降りただけで親から許可をもらったわけじゃない。

 私はとりあえずあまりいけてなかったミツキのお見舞いに行くことにした。


 電車に乗り岐阜県に向かう。

 岐阜の北のほうも雪が降っている。もこもこと降り注ぎ、風が寒い。コートのポケットに手を入れ、私は病院のほうに向かっていく。


 白い吐息を吐きながら、私は病院まで歩いていき、ミツキの病室を訪れた。


「よぅ、ミツキ。元気か?」

「じゅんぺーざん……ぐずっ」

「風邪ひいてるの?」

「鼻風邪ひいてんだぁ……。鼻水が止まらん……」

「あ、じゅんぺーさんお久しぶりです……」


 と、なんか隣にはウヅキが寝かせられていた。


「なんで二人仲良く入院してるの?」

「わたすは普通に入院したんだが……。ウヅキがものすごくひどいインフルエンザにかかっちまって倒れたんだべ……」

「今はインフル治りましたけどね……。治って帰ったら熱でぶっ倒れまして……」


 私と同じことしてんじゃないよ。

 ったく。私はお見舞いに持ってきたリンゴをとりあえず二人に剥いてあげることにした。皮をむいていき、兎さんを作る。

 少し食べてみたが蜜が入っていてとても甘いリンゴだった。


「二人は多分そろそろゲームはできるよね」

「はい……」

「風邪が治れば……」

「あ、別に強制じゃないよ。無理して復帰しようとしてもまた病気になったらあれだしね。ただ、その場合給料とかはどうしようという話にはなるんだけど……」

「い、今って払われてないですよね? 二人ともやってませんし……」

「払ってるよ?」


 そういうと二人は固まっていた。


「まぁ……金もらうということは責任もついてくるわけなんだけど……。気にしないでいいよ今は。休職って感じになってるけど一応仕事してもらってるからねぇ」

「あ、あの、じゃあ私だけでも今度配信に……」

「そんな責任を感じることないって。今は治すことに専念しなさいっての」


 二人はなんだか申し訳なさそうにリンゴを食べていた。

 責任感、強いからなぁ。もっとなぁなぁでいいんだけど。まぁ、こんな生々しい話をした私自身にも責任はあるが……。


「復帰するときにはまた連絡ちょうだいよ。復帰配信の時は出てもらうから」

「わかったべ……。全力で退院がんばるべ!」

「すみません……」

「いいのいいの。社会は厳しいからねぇ。私だけでも甘やかしてあげないと」


 社会も厳しくて、私も厳しかったら優しくしてくれる人なんていない。救いはないんだよ……。社会が厳しいから私は甘くする。

 私自身には厳しくてもいいけど。気持ちいいし。


「んじゃ、早いけどお暇してゲームしようかな。顔見せにきただけだしね」


 私は椅子から立ち上がる。

 そして、バッグをまさぐる。


「はい、二人にお年玉」

「え」

「も、もらえないべ……」

「元日じゃないともらえないタチ? 変わってるねぇ」

「いや、働いてもないのに金もらってますし……」

「そうだねぇ。でも、お年玉は子供の特権だよ。大人になったらもらえないんだからもらっておきなよ」


 私は二人のベッドの上に投げて、そのまま病室を後にした。

 ふふ、申し訳なさそうにしてて可愛かったな。なんて思いつつ、私はそのまま帰りの電車に乗り家に帰ったのだった。


 家に帰り、一週間ぶりにゲームにログインする。

 やっと、やっとゲームができる……! いろいろと必要なものを終わらせてやっとだ。私は意気揚々とヘッドギアをかぶり、ゲームを起動した。


「さぁ、異世界のぼうけ……」


 意気揚々とした気持ちが一気に冷めていくのを感じる。

 というのも……。


「世界が終わってる……?」


 ログインすると世界が終わっていた。











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黒猫は眠らない
新作です。VRMMOものです。
読んでもらえると嬉しいです。
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