大事な話?
やっと家に帰ってきた。
だが、ゲームはまだ出来ないんだよな。ここ1週間はゲームが出来ないほど忙しくなる。
父さんから話があると言われたのでとりあえず父さんのところに向かうのだ。
なんなんだろうなと思いながらレンタカーを走らせ父の住む田舎町に向かう。
父さんが呼び寄せるってことだから結構大事なことなのかもしれないけど……。
家の前に着くと、豊と稔の家も来ているようだ。まぁ、まだ新年ムードだろうしな……。お年玉の催促だろうか。
稔たちも高校3年生だし結構な額を入れてはいるが……。
「はいはーい、じゅんぺーちゃんが来ましたよーっと」
靴を脱ぎ、家の中に上がる。
茶の間に向かうと、全員正座していた。
「え、なにこの雰囲気。葬式?」
「いや、話がある」
「はい……」
「稔たちがなんかやらかしたかー? ま、いいけど。話ってなんですか?」
私は座り、話を聞くことにした。
「潤。お願いだ。この子達の学費を出してくれないか」
「お願いします!」
「お願いします……」
「ん、いいですよ」
私はお茶請けを食べる。
学費ねー。いい大学行こうとしたら高いもんねー。
「すんなりと……」
「どこの大学いくん? 海外行っちゃう?」
「いや、そこまでは……」
あ、この茶請け美味しい。あんバターってこんなに美味しいのか。奥が深いな……。
というか、学費のためにこんな葬式みたいなムードになってんの? 別に出してほしいなら出すのに。
「あ、ありがとう……」
「学費のためだけにこんなムードって……。いくらです? 出しますよ」
学費の話を聞いた。
ふーん。結構いい大学だ。それにお高め……。奨学金という手もあるけど奨学金って返すまでが地獄だもんな。
だったら金持ってる身内から借りればいいという話なんだろうが……。
「潤。その、なんだ。少しはお金を使うことに関して躊躇をだな……」
「いいのいいの。金は持ってたら使わないとね。金持ちが溜め込むから経済回んないんだよ。もっと使っていかなきゃ。それに父さんだってこの前新しいトラクターを買いたいから貸してくれって電話してきたじゃん」
「…………」
「私って使おうと思わないとあまり使わないから結構まだ余裕があるんだよねー。今住んでる家の家賃だって生涯住んでも余裕で支払えるくらいにはあるよ。伊達に人気配信者してませんー」
そもそも私の場合、広告料だけでもバカにならないくらいもらえてるし、結構そういう育成学校でも講演させてもらってるし、テレビ出演とかCM出演も最近増えてきてるし。
まだ懐は痛んでおりませんとも。
「潤ねえって今総資産いくらあるの……?」
「んー、ざっと20億はあるかな?」
「にじゅ……」
「案件一つでも結構な額貰えるからね」
まさにドリーム。このドリームを夢見て始める人は多いが、夢の前に破れ散る人も多数いる。
「億万長者だ……」
「だしょー? 稔たちの成長のために使うんなら出し惜しみはしないからさ。いい大学行きなよ。武器になるしねー。君たちは私みたいな博打職業じゃなくて堅実に生きた方がまだいいよ」
「えー、私も動画投稿者になりたいのに」
「いいもんじゃないよ……。見られるかどうかはわからないし。私だって運が悪ければ収入なくてフリーターっていうことにもなってるし」
勝てば天国、負ければ地獄。私の職業はそんなもんだ。
「ま、受験頑張んなよ。どこの大学でも費用は出してあげるからさ」
「潤ねぇ……」
「ありがとう」
叔父さんが頭を下げてくる。気にしなくていいんだけどな。
まぁ……。私も見返りがないわけではない。叔父さんはたしか漁師だったかな。
「叔父さんって漁師でしたよね?」
「あ、ああ。そうだが」
「今度船を運転させてほしいんですよ。動画で撮りたいんで」
「それぐら……いや、免許はあるのか? 流石に無免許じゃ……」
「船舶免許一級、すでに取得済みです!」
「なんで取ってるんだお前……」
いや、なんか馬鹿みたいに免許を取ったんだよな。重機もバスもタクシーも運転できます。
なんならフグの調理師免許を取るために22歳から24歳の時まで近場の鮨店で働いてたし、調理師免許も独学で取得してる。
こう見えてもじゅんぺーちゃん超ハイスペックなので。
「趣味で取ったんでーす! じゅんぺーちゃんは重機もバスもトラックも船も何もかも運転できまーす」
「我が子ながらなんてハイスペック……」
「船の免許持ってるはいいけど運転したことないんですよ。今度運転してみたいなーって。やっぱあまり運転しないのに船を買うのもなんかアレじゃないですか。で、この際に叔父さんに頼んで漁船運転させてもらおうと」
「わかった。それで良ければ運転させてやる」
「今度叔父さんの漁についていきますね!」
よっしゃ! 初めて運転できる。
まぁ、人の船だしあまり乱暴にはしないけど。お釈迦にしたら流石に申し訳ないしね……。
話していると時計のベルが鳴る。正午を迎えたようだった。
「昼か。どっか食べに行く?」
「行きたい!」
「なにがいい?」
「寿司!」
「回転寿司隣町にあったよな……。んじゃ、いこっか!」
ナチュラルに金出す流れになってるがいいだろう。新年だし寿司でもなんでも食わせてやるか。
「あ、二人ともこれお年玉」
「いいの!?」
「い、いいんですか……?」
「いいよー。二人ともまだ学生なんだし貰う権利はあるよん。あまり入ってないけどごめんね」
「い、いや! 別にいいよ……」
「ありがとー潤ねえ!」
喜んでもらえて何よりだ。




