動画投稿者としてのエンタメ
鬼ごっこが始まり1時間が経過した。
私は再び牢屋エリアのほうに向かってみる。牢屋エリアにはたくさん人がいるようだ。たくさん捕まえたんだな……。
どれ、今度はどうやって解放しようかな。
そう考えていると、鬼が二人からなんと四人に増えた。
「あー、こりゃ無理だな……。残りの人数を見つけるより、解放されないように見張りを増やしたほうが勝ちって判断したわけか」
実際、その判断をされると助けづらくなるから厄介だ。
こりゃ解放を考えないほうがいいかもしれないな。こんなところで身代わりの権利を使うのもそれはそれでダメだ。
今回はガチで勝ちに行く。そう決めたからには勝率を高めていかなければならない。リスクがある行為はなるべく避けていくのが得策。
だが……解放しないでいくのもそれはそれで動画投稿者として正しいのだろうか。ここで危険を冒しながらも解放しに向かうのが動画投稿者として面白いんじゃないだろうか?
どっちを取るか……。
「助けに行きますか……」
少し悩んだが、結局助けに向かうことにした。
最悪、身代わりの権利を使う。使わないに越したことはないが、四人相手だとつかってしまいそうだ。
捕まったらどこかに転移させられるから……。ヴォナスとは少し離れてしまうが。
「ヴォナス、私は助けに行くから逃げていいよ」
「え……」
「一回捕まると思うから。身代わりの権利でどこかに転移させられたら離れちゃうしね」
私はそう言って、行動に移した。
まずは鬼の気を逸らさねば。私は限界まで近づいていく。気配を殺しつつ、鬼の油断をまず狙うことにした。
一瞬でも死角ができればその隙に移動できる。鍵はあるから……強行突破で進んで急いでいけば何とか間に合うだろう。
私が隠れながら機を見計らっていると、背後から声が聞こえた。
「じゅんぺーさん……」
「おわ、ヴォナス。どしたの?」
「わ、私も、手伝い、ます! じゅんぺーさん、の、力に、なりたいんです」
「……道連れを選んだわけだね? その心意気よし。じゃ、どっちがかおとりになって引き付けようか。二人で突撃して鍵をあの穴に差し込んで捻るだけ。やることは簡単だ」
「わ、わかり、まし、た」
ヴォナスはやるぞといってガッツポーズを作っている。
「よし、なら速攻!」
「は、はい!」
私たちは物陰から姿を現した。
鬼はこちらを目ざとく見つける。すぐに捕えようとしてきたのだった。私はタッチしてこようとする鬼の手を躱し、鋼水の糸を使ってガードする。もちろん鬼のスペックでは鋼水の糸なんてすぐに負けてしまうが、時間稼ぎだけが目的なので大した問題じゃない。
「ひいいいいいい!?」
「ヴォナスすごい! まだ粘ってる!」
「こないで、くださぁい!」
「うおっと!」
鬼の手を躱しつつ、私は鍵穴に鍵をねじ込んだ。
「が、頑張れ!」
「あと少しだ!」
捕まった人からの声援も聞こえてくる。
私はもうなりふり構わず、鍵をひねった。その瞬間、再び牢屋の鍵が解かれ、捕まった人たちが解放されていくのだった。
が、それと同時に私の背中に鬼の手が触れる。
「捕まえたぜ……」
「残念」
《身代わりの権利が発動します》
私はニコッと笑う。
「身代わりの権利もってますから」
「なっ……」
「じゃあねぇ」
私はどこかに強制的に転移させられたのだった。
今思えば今作主人公って変な風に狂ってるから歴代書いてきた主人公みたく狂うってことがまずないな




