普通じゃない異質ななにかのじゅんぺーちゃん
罪子は挑戦者といった。
私たちを捕まえようと動き出す様子はない。
「どういうこと?」
「ここでは試練と呼ばれるものを与えるのですわ。試練に打ち勝てば逃げるのに役立つものが、負ければ即死。捕縛ですわね」
「なるほど。で、私たちはそれを受けるしかない、と」
「逃げられませんし、この遺跡に入った時点で強制的に試練は始まりますわ」
なるほど。
本当に罠みたいなものだったな。だが、その試練を突破すればいい。
「で、試練内容は?」
「ここの遺跡の試練……。それは簡単ですわ」
罪子は胡散臭く微笑んだ。
「じゃんけんですわ」
「じゃんけんね」
「私とじゃんけんをなさるのです。五回勝負で三本先取ですわ。いたって普通のじゃんけんルールです。質問はあれば受けますし、今この空間では私が触れてもあなたは捕縛扱いになりませんわ」
「じゃあ質問。罰目は?」
「罰目は外で追いかける役ですわ。二人一組のVTuberですし、片割れがこっちになったのですわよ」
なるほど。
それにしてもじゃんけんか。なかなか難しいことを要求する。コメント欄でもじゃんけんに不安視する人がいる。
というのも、私の運が悪いから勝てないとかいう人が多かった。
「じゅんぺーさん、運ゲーに挑まれますの? そちらの方でもよろしいですわ」
と、罪子も情けをかけてくれていた。
が、意味はない。
「いや、私がやろう。じゃんけんが運ゲーだと思ってんなら大きな間違いだぜ」
「わかりましたわ。では、一本目まいりましょう。最初はグーの、じゃんけん!」
ポン、という掛け声で私はパーを出した。相手はグーだった。
「なっ……」
「じゃんけんは予備動作があるんだよ。パーなら指を広げる動作、グーならちょっとだけ出すのが早い。最初はグーで始まってるからな。それを見分けられれば勝つのは余裕。それに、人となりを知っていて普段からじゃんけんをする仲であれば、統計学でじゃんけんに勝ちやすい」
「いや、普通見分けてから手を変えるなんてできませんわよ!?」
「私は普通じゃないんだっての。天才じゅんぺーちゃんだぜ?」
動体視力とかはお手の物。反射神経だって随一だ。
『変態的なスペックで草』
『本当に普通じゃねえよ』
『変態はそこも変態』
よく言われる。
変態的なスペックを持ってるって。そらそうだ。私は天才だぜ? 割柏何でもできんだよ。法則を無視したこと以外は。
「とくと見せてやるよ。じゅんぺーちゃんの異質さを。じゃんけんで勝負だなんて運がなかったのはお前のほうなんだぜ」
「ひっ……」
「さぁ、残り二本だ」
「あ、あと四本残っておりますが……」
「勝つのは私だよ。じゃけん、じゃんけんしましょうね~」
「この場面でダジャレ言いますか!?」
ヴォナス、ナイスつっこみだ。ボケを拾ってくれなかったら私は泣いちゃうぞ。
「私がやることに異論がなかったし、私たちを二人組として見てくれたんだから私とヴォナスは別々だって今更言わないよねぇ?」
「私はもしかしてとんでもないバケモンを相手してるんですの!?」
「そうだよ。人類が生み出した天才じゅんぺーちゃんは被虐趣味の化け物だぜ」
「見た目もいい、才能もものすごくあるって相当恵まれてますよねぇ……」
ダメなところはマゾヒスト。
「じゃ、始めようか。最初はグー! じゃーんけーん……」
ここでタイトルの別解を出すって思ってなかった……。
変態的な思考じゃなくてスペックも変態的に高いんですよねぇ。みなさんはわかってたことだと思いますが……。




