イベント開始!
1月12日。ついにやってきたイベントの日。
私はもちろん配信しながら参加する。3時間、鬼から逃げきったら賞品をプレゼントできるようだった。
『ようこそ! イベント専用ワールドへ! ルール説明をさせていただく、DJ松永だよーん!』
運営もキャラ方針が固まってきたのか、ルール説明をする人を雇ったのか、役職を作ったようだ。
キャラ方針が固まるのはいいことだけどちょっと遅いよ。これもう第三回目だよイベント。たしか。
『今日は鬼ごっこ! 新年早々鬼ごっこをするぜ! ルールは簡単だ。運営が雇った鬼から3時間、逃げ切るだけの簡単なゲームだ! 捕まった人は牢屋エリアと呼ばれる場所に転送! ゲーム中に死んだりしてもそこに転送されるからな! 死=捕縛だぜ』
なるほど。
そういう発言をするということはこのイベント内でも死ぬ要素があるということになる。鬼は倒せないということを聞いているから……。
『でもそれじゃ、逃げる側が不利すぎるよな!』
逃げる側にもなにかメリットのようなものを提示してくれるらしい。
『牢屋エリアにいる人は捕まったまま終わり……ってわけじゃねえ! 生きている人が、牢屋エリアの鍵を解錠すると、捕まった人は全員解放! 鬼さんは一から捕まえなおしってわけだぜ! もちろん、鍵は逃げるプレイヤー全員に渡そうか! 鬼さんは牢屋エリアも守らねーとなぁ!』
牢屋エリアにいるからといって鬼がいなくていいというわけじゃないのか。
『今回の鬼役は有名配信者の方々! サーバーわけこそされているが、有名な配信者や実況者の人に集まってもらってるぜぇ? 1サーバーおよそ1000人! 鬼のスペックも段違いだからな! 頑張って生き残れよ!』
なるほど。
スペックが格段と上がっているとみて間違いないだろう。
『運営のスタッフも鬼になっているから気をつけろ! さぁ、ルール説明はこれぐらいにして、とっととゲームを始めようじゃねえか!』
そういうと、私たちは違う場所に転移させられた。
どうやらプレイヤー個人によって開始場所は違うようだ。
『それじゃ、ゲームスタート、だぜ!』
そういって、映像が途切れる。
私が転移したのは森の中だ。周りを見渡すが鬼のような輩はいない。鬼はわかりやすくしてあると事前に説明しているので見たらわかるんだろうけど……。
私はとりあえず止まっているわけにはいかないので歩き出す。茂みをかき分け、道に出ると。
「あ」
「あ」
赤い服を着て、頭上には鬼の顔のようなマークが浮かび上がっている人がいる。
これ、鬼だな。うん。
「やべ!」
「さっそく発見だぜ!」
私は全力で逃げるが、あっちのほうが素早い。
すぐに距離を詰められそうだ。私は鋼水の糸を射出し、木の上に飛び乗る。そして、木の上を鋼水の糸を使って逃げていく。
「あっぶねぇーーーーーー! すぐそうやって鬼に出くわすんだから!」
開幕早々ダウンとならなくてよかったぜ。
でも……鬼の身体能力がすさまじいな。ものすごく素早くなってる。こりゃ逃げ切るのはきついな。自力だけじゃ。




