フラグを探して
雪国ノスランドは一年中雪が降っている。
その理由は、そもそもここが高山地帯にあるというのが関係しているだろう。
雪のいいところはゲームにおいてはほとんどない。
というのも、このゲーム、状態異常に凍えというのがある。寒さによって攻撃力が半分になってしまうというもの。
これを回避するには鎧を着るか、狩人などは互換装備の上着系統を着るしかないのだ。互換装備は見せかけのようで、時折見せかけじゃないんだよな。
だからこそ、あまり着用はしたくないが……。
「くっそ、雪超動きづらい!」
雪が降っている関係上、雪が積もっているところは動きが制限されてしまう。
さすがにここで攻撃力半減なんていうバカみたいな状態異常にかかっていたらそれこそ終わる。だから縛りプレイしているとはいえど互換装備は許してほしい。
『あー、雪ってそういう悪いとこが……』
『だから基本的に雪国は行かなかったんだな』
『じゅんぺー、防具一切つけてないし、攻撃力半減ってなったら試行回数が増えるもんね』
攻撃の回数が増えるとなると時間が増える。
時間が増えると、攻撃を被弾してしまう可能性が増える。だから雪国の攻略が一番防具なし縛りプレイヤーにとってきついと言われている。
どんなプレイヤーでも慣れないと被弾は必ずする。それはアマチュアでもプロでも同じことなのだ。
「え、普段いかないならなんで雪国に来たんですか?」
「それはね……。ちょーっと気になる素材が会ってさ」
「気になる素材?」
「幻の鉱石って呼ばれるんだけどね、このノスランドの採掘エリアでごくまれに採れる沁氷という宝石……。それがちょーっと気になるんだよね」
「気になる、とは?」
「じゅんぺいってさ、隠し職業って知ってる?」
「隠し、職業?」
「このゲームにもあると思うんだよね。戦士とか、パラディンとかそんなありきたりなものじゃなく……。もっと特別なものが」
公には明かされていない職業。
今のところ誰も見つけてはいない……が。
「そんなものが……。でも、それと沁氷の宝石とはどのような関係が……?」
「この前、沁氷が欲しいというクエストが冒険者ギルドに貼ってあった。差出人は貴族で、報酬は沁氷に見合わなかった……」
「見合わない?」
「そう、その見合わなさがフラグ。きっとそのクエストをクリアしたらフラグが立つはず! こういうのは見つけるのにも一苦労だからね! メタ読みなんだけど、こういうゲームって基本、攻略難易度と報酬は見合うようにするはずなんだよ」
普通の人なら受けないようなクエストだ。
沁氷の宝石はものすごくレア。本当に確率が低く設定されている。くせに報酬はただのお金で、それも5万と、本当に見合っていない。
だからこそ、疑問なんだ。違和感があるっていうか……。だから一応クリアしようとここに来たんだけど。
「人が足りないな」
「人、ですか?」
「二人でそんな低レアリティのもの、よほど運がよくない限り何日かかるかわからん。人海戦術と行きたいが……。まぁ、とりあえずフレンドを全員呼んでおこうか」
「はっはー! 話は聞かせてもらったぜ! じゅんぺーよ!」
背後から男の声が聞こえる。
「超久しぶりだな! 俺を覚えているか!」
「ああ、白犬……」
「うん、合ってる! 人の力が欲しいなら手伝ってやろう! ライバルだからな!」
「ライバルではないけど」
なんでここにいるんだろうか。本当に会うの超久しぶりだ。
「あ、あの、配信見ててわ、私も近いから来ました! お、お久しぶり、です! 覚えてないかも、しれませんが!」
「ああ、ユグドラシル。覚えてるよ」
「ひゃうう……。覚えててくれたぁ……」
「二人も手伝ってくれるの?」
「もちろんだとも! 勝負したいしな!」
「は、始めた時とてもお世話になったので……。恩返しがしたいな、と……」
「ユグドラシル。ありがとう」
「いやいや、いいってことよ」
「いや、白犬にはいってないんだけど……」
ユグドラシルだけでいいよ。
白犬、マゾヒストの私でも嫌だってくらい暑苦しくて無理だし……。




