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怒りのじゅんぺー

 私は刀を握りしめ、魔物を切り裂いた。

 とりあえずお金を稼ぐことが第一。あまり無駄に散在しないからため込んでいたが、そのため込んでいた分を一気にこの刀に使った。

 急にお金がいる事態になっても困るし、金策に走らねば。


「ため込むには時間かかるのに使うのは一瞬なの辛いなぁ……」


 不満をぼやきながら、魔物を倒し素材を拾っていく。

 

『わかる』

『現実もそう』


 だよな。

 視聴者と話しながら魔物を倒していると。なにやらカメラを回している二人組の男がいた。彼らもどうやら配信しているようで、魔物を次々と倒して……いや、魔物じゃないあれは。

 小さい女の子が転んだのか、動けないでいるようだ。男の子が守るように立ちふさがっているが、実力的には彼らのほうが上らしい。


「…………なんだあれ」

『今絶賛話題の炎上系の動画配信者だ』

『PKをわざわざ配信してる二人組だ……。非難の声とかすごいらしいよ』


 視聴者は知っているようだった。

 チャンネル名はアガサクリスティーのゲーム部屋ということ。アガサクリスティーをそういう行為で汚してほしくはなかったな。

 前までは普通にゲームの配信をしていたが、炎上してしまったほうが見てもらえるからということで炎上系に切り替えたようだ。ゲームでもそういう行為を平気でするようになったらしい。


「何はともあれ助けないと」


 男は剣で切りかかっていたのを、私は刀で受け止める。


「あん?」

「なに殺そうとしてんだプレイヤーを」

「なんだお前」


 私は刀で攻撃を受け止める。

 

「どうプレイしようがプレイヤーの勝手だろうが! 邪魔すんじゃねえよ動画の! 俺の視聴者が迷惑がってんだろうが!」

「知らないっての。そういうことして視聴回数稼ぐのダサいと思うけど」

「ださ……てめぇ」


 ダサいという言葉が怒りに火をつけてしまったらしい。

 ものすごくにらみつけてきた。


「もっかい言ってみろ! 俺のどこがだせえんだ!」

「何回でも言うよ。ダサいダサい。なにその自分は悪いことしてますアピール。そういうのはモテないんだって。まじめにやっているこのほうが何倍もかっこいいよねぇ?」

「こんの……少し見た目がいいからって調子乗ってんじゃねえぞォ!」


 剣を大振りに振るってくる。

 私はかわし、まずは腕を切りつけた。


「エゴイズムがあるのは別にいい。けど、こういう他者に害をなすようなことをしなきゃいけないエゴイズムは嫌いだよ」

「俺は好きなんだよォ! 死ね!」

「弱い」


 私は刀で剣をはじき、心臓あたりを刀で突き刺した。

 男はそのまま、力なく倒れる。そして、消えていった。


「よわ」

「ひっ……」

「別に正義感ぶるわけじゃないけどさ、こういう動画はすっげーむかつくんだよね……。私も動画投稿者だからさ。そういう発言とかには気を付けてるわけよ。信頼を崩すのは簡単だけど得るのは難しいし再構築するのはなおさら。だから視聴者には私に失望してほしくはないし、悪いことはしない、言わないで貫き通してる、むかつくことがあってもあまり動画内で怒りたくはないし、今絶賛配信中だから気を付けようと思ったけどさ……。もう我慢できない」


 私はビビって剣すら抜けない男の胸ぐらをつかむ。


「ふざけんじゃねえぞ。他人に迷惑かけてなにが動画投稿者だ。自己顕示欲の強い犯罪者と同じじゃねえか。動画はお前らの悪事を世の中に自慢するための道具じゃないぞ」

「ひっ……」

「動画っつーのは基本的に運の世界だ。見てもらえるかどうかも運、視聴者が動画を見つけてくれるのも運。運の勝負が嫌だからって悪いほうに逃げてんじゃねえ。運勝負がしたくないならだれもやったことのない目新しいことをやりやがれ。バズるネタを必死子いて見つけろや。そういう努力をしてから見てもらえないことを嘆け。努力もしねえで嘆いて、逃げるなんてダサいにもほどがある」

「ご、ごめんなさい……」

「……よし」


 私は男を手放した。そしてずっと呆然と見ていたお子様プレイヤーに声をかける。


「大丈夫かい?」

「あ、ありがとうございます……」

「ありがとうございます!」

「うん」


 マジでキレちゃった。恥ずかしい。










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黒猫は眠らない
新作です。VRMMOものです。
読んでもらえると嬉しいです。
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