異常な王女様
私たちはとりあえず王都から出ることになった。
「王女様を連れ去るような真似して大丈夫なんすか!?」
「まぁ、大丈夫でしょ」
女子高生五人も協力してくれるようだ。
「初めまして! 私はリュトワールっていうの。よろしくね」
「私はウヅキです。こっちがミツキで」
「ワサビでこっちカラシ」
「コガラシっす!」
「私じゅんぺーな」
名前を紹介し、私たちは砂カバの上に乗って先に進むことになった。
砂カバはウヅキ曰く魔物のようだが、リュトワールは魔物に懐かれる性質を持つらしい。魔物に襲われたことは一度もなく、可愛いといっていた。
砂カバの生態はよく知らないが、凶暴というわけではなさそうだが。
「それにしてもカバ鈍い……」
「カバだからねぇ」
「でも、パワフルね」
ゆっくりとカバに乗り進んでいく。
すると、今度は地中から何かが現れた。蜘蛛のような魔物と、サソリのような魔物。サンドスパイダーとプラチナスコピオンという魔物のようだ。
襲い掛かってくるのだろうか。威嚇しているような感じで私たちに近づいてくる。私はカバから降りて双剣を構えた、が。
サンドスパイダーとプラチナスコピオンはカバの隣を歩きだした。
「ふふ、可愛いわ! 私、魔物に好かれやすいの! この子たちも私が好きなのよ!」
「そうなのか?」
だからといって少しこれはおかしいような気がしてならない。
魔物に好かれやすいといっても、所詮は好かれやすいってだけ。襲ってくる魔物がいてもいいはずだが、襲い掛かってくるような魔物は見当たらないし、蜘蛛とサソリって割と獰猛なほうだと思うから好きになるなんてことはありえるのだろうか。
「あ! 後ろにもなんかトカゲみたいなのいる!」
「コモドドラゴンみたいっすね」
「あれはコロドドラゴンっていうトカゲの魔物みたい」
トカゲの魔物……。
爬虫類って好き嫌いの感情なかった気がするんだが。
コロドドラゴンのほうを見ても、襲い掛かってくる様子はなく、群れで私たちについてきているような感じがする。
「じゅんぺーさん……。なんかおかしくないべか。魔物とエンカウント率たけーし、ここまで襲い掛かってこないもんなんか?」
「ミツキはさすがに気づいた?」
ミツキもこの異様な魔物の数と、魔物の大人しさにビビっているようだ。
私自身も少し驚いている。もしかして王女様ってとんでもない傑物? 王女様はいったい何者なんだ。
これは王様か誰かに聞いてみたいが、さすがに連れ出した手前、聞きに戻れるはずがない。
「かわいー」
「トカゲってそこまで可愛いかしら……」
「せんぱーい!! かわいーっすよー?」
「そうっす! サソリなんかもかっくいーっす!」
ワサビはカラシとコガラシの後輩ペアと仲良くやっているようだ。
ウヅキは王女様と話している。四人はこの異常事態も受け入れているようだ。
「これ……わたすたつがおかしいんだべか……」
「いや……。私もこの状況は少し不思議に思ってる。調べてみないといけないけどさすがに映像を残してきたから私が戻ってもな……。こういう時は」
私はヒステリアを呼ぼうとした時だった。
プツッ、とミツキの姿がいなくなる。そして、そのままウヅキも消えたのだった。




