面白そうだ
グラビエナ砂漠国に到着。
砂漠国というだけあり、砂漠の中にある国のようだ。
そして、行商人の人が教えてくれたのはグラビエナ砂漠国はこのグラビエナ砂漠すべてが領土らしく、このグラビエナ砂漠は大陸の下半分を占める大きな砂漠。
だが、街と呼ばれるものは領土の割にはあまり多くないようだ。
「この国の特徴といえばやはり化石燃料! 魔素リンなどの資源が豊富なのだよ! だが……。最近は魔素リンの産出が少し落ちぶれていると聞くね」
行商人がそうやって話し始めた。
「というのも、主な採取場で強大なモンスターが出現してうかつに近づけないのだとか。王も困っていて倒してくれる冒険者を募っているようだが……」
これもクエストの一部だろう。
魔素リンは一応購入できるらしいが、主な採取場所を魔物に守られているために、魔素リンの価格があり得ないくらい高騰しているようで、たくさん買うとするならそれこそ大量の金が必要になる。
金で大量に魔素リンを買うか、それともその魔物を倒すか、だ。
「困ってるなら助けよー! 王城はどこ!?」
「王城? 王がいる宮殿ならあのデカい建物だ」
「いくっす!」
と、コガラシ達は突っ走って向かっていった。
元気いっぱいなことで。私は五人の後を追いかけるように走って向かう。宮殿の前につくと、門の前には兵士がおり、たくさんの冒険者が列をなしていた。
どうやらこの兵士たちは魔物を討伐しようとしている志願者のようだ。報奨がでるらしく、その金目当ての冒険者。
「うわぁ、行列っすねぇ……」
と、コガラシがぼやくと。
私の背後に誰かがぶつかってきた。
「きゃっ、ごめんなさい」
「あ、いえ。私も不注意だったんで」
ローブをかぶった人がこそこそと移動している。
怪しい動きしている。随分と怪しい。あれが怪しくなくてなんなんだろう。私はウヅキに少し席を外すことを告げ、そのローブの人を追いかけていく。
人目のつかない路地裏に入っていくと、ローブを外した。
金髪をたなびかせた女性。褐色肌で、少年のように髪をまとめ上げて、帽子で隠している。男の格好をしている?
そして、ローブからナイフを引っ張り出してきたようだ。
「今度こそ私が倒して見せますわ……」
「そこでなにをしてるんですか?」
「ひっ! だ、だれ!?」
と、私が声をかけるとナイフを向けてくる。
「し、城の使いの者ね! 誰だか知らないから最近雇われた子なのでしょうけれど! 私は戻らないわ! 冒険が待っているの!」
「あ、いや、そういうのじゃなくて。随分と怪しいから後をつけてきただけですよ。立ち振る舞いからしてこの国の貴族か何かなんだと思うけど……。敵じゃないから!」
「そ、そうですのね。あ、いや。そうなの」
女性はナイフをしまう。
私が言うのもなんだが、それで信用できるってどうなんだ。
「で、ナイフをもってどこに行くの?」
「そりゃもちろん……冒険! 冒険よ! 魔物を倒して! 世界各地を回るの! これから私の旅は始まるのよ!」
「そうなんだ」
でも気になるのは城の使いという言葉。
きっとこの女性は姫様なんだろう。そして、城の使いとすぐに言ってきたことから、数回もしかして脱走しているんじゃないだろうか。これ初犯じゃないな。
「ねぇ、あなたもしかして冒険者? なら頼みがあるの! しばらく私とパーティを組んでくださらないかしら!」
「パーティ?」
「あなたもうすうす気が付いていると思うけれど、私は実はこの国の姫様なの! リュトワールっていうんだけれどね。私が脱走する共犯になってくれない?」
「もうちょい言い方ってもんがあるだろうに……」
こうまっすぐ共犯になってくれっていうって。
馬鹿正直っていうかなんというか。
「これもワールドクエストの一つか? ま、しょうがない」
「うけ……っと、隠れて!」
と、口を押えられ物陰に引きずり込まれる。
姫様はどこだと探し回っている声がする。どうやら城の人に気づかれたらしく探し回られているようだ。
城の兵士の声はどんどん遠ざかっていく。
「じきに人数も増えていくわね。王都を出るのは早いほうがいいかもしれないわ」
「オッケー。じゃ、警戒しつつ王都を抜けようか。今王城に私の連れいるけど後で連絡でもしておこう」
私は姫様の手を引く。
「え、受けてくださるの!? 場合によっちゃ犯罪になるのに……」
「受けるよ。冒険がしたいんでしょ?」
「でも、あなたは私に巻き込まれる覚悟を決めたのよね? 私が言うのもなんだけど、関係のないあなたなのよ?」
「うん。でも、ま、そういうのに加担するのも面白そうだ」
面白そうだからやってやろうかな。
これがワールドクエストの一環であろうとなかろうと面白いのならやる。
「……ならちょっと待ってくださいね。せめて映像でメッセージだけは残しておきましょう」
そういって、魔道具カメラを取り出した。
そして、録画を回し始める。私は王女様の肩を引き寄せる。
「イェーイ! 王様君見てるぅ~? 今からあなたの王女様とイケナイことしちゃいまーす!」
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