ヨモギと思ったらトリカブト
ボロボロになっているホツホマレ。
ホツホマレは剣を落とし、がなり始めた。
「……んだよてめえ! 大体、てめえにはなにもしてねえだろ! なんで俺の邪魔を!」
「そういうのいいよ。勝てないと悟ったから怒鳴ってビビらせようと思ってるの? 無駄だよ」
私は首元に剣を突きつける。
このイベントは二人一組で参加するイベント。つまりもう片方のペアがどこかで見ているかもしれない。私を不意打ちしてくるかもしれないな。
警戒しつつ、キルしないと。
「知りたいんなら教えてあげるけど……。私はこういうPK行為、すっげー嫌いなの。エゴイズムがあるのはしょうがない。けど、それが他人に悪影響を与えるのがすごい嫌い。だから来たんだよ」
「正義の使者気取りやがって……!」
「人間、誰しも正義のヒーローには一度憧れるものでしょ?」
私は双剣を振り下ろし、ホツホマレをキル。
もう片方のプレイヤーはどこにいるのか。そもそもホツホマレをキルしているときに出てこないとなるとこの場にいないか……。それとも、恐れをなして逃げたか。
まぁ、むやみやたらに追跡して殺すというのもなんか違う話だ。
『じゅんぺーキレるとこわ……』
『じゅんぺーちゃん意外と怖い人?』
と、コメント欄が怖いというコメントであふれかえっていた。
おっと。
「ったく、出直してきんしゃい。このじゅんぺーちゃんに勝とうなんて十年早い。もっと罵倒とかを覚えて来いってんだ」
サディストの素質があったら見逃してやったのに。
サディストになり切れてない迷惑野郎だ。
「さて、オヤカタのもとに戻るか……」
と、私はオヤカタの元に戻った時だった。
オヤカタたちはぐったりしている。
「なにがあった?」
「あ、じゅんぺー……」
「おい……僕の体力があと少しで切れそうなんだが。君の言うことを当てにしないほうがよかった……」
「あー……。マジで疲れた」
「実はねー……」
メルルから話を聞いた。
というのも、満腹度が減ってきたから腹ごしらえをしようとして、そこら辺の野草を天ぷらにしてみたらしい。
日本でも食べられる野草はあるし、食べれるだろうということでメルルが料理したのだとか。ゼノたちもメルルを信用して食べたらしい。
が、食べた野草が毒草だったらしい。なんとか解毒したものの、急いで解毒薬を買いにいってHPが尽きかけたのだとか。
「そこら辺の野草食べるなよ……。知識ないと見分けつかないと思うけど」
「もう、メルル。お前は一生料理するな……」
「ごめーん……」
「襲われたもんだと思ってひやひやしたけど、そんな馬鹿気た理由で……」
満腹度が減ったなら私が何かしら食料を調達してきてやったのに。
「だってヨモギだと思ったんだもん!」
「現実でもヨモギだと思って食べたらトリカブトだったっていう話があるでしょうが……」
私は運転席に座ってるオヤカタに声をかける。
「運転できる?」
「毒は回復したもののすごい疲れた……。悪いが運転してくれ」
「オッケー。今回はミスしないように気を付けていくね」
私は運転席をオヤカタと代わる。
私もそろそろ何か食べないとな。でもメルルみたいに野草を取ってきて食べるわけにもいかないし、ウシ型の魔物とか探して肉を食べようか。
メルル「じゃじゃーん! 天ぷら作ってみましたー!」
オヤカタ「うまそうだな」
ゼノ「これ、大丈夫か?」
メルル「天ぷらにしたら何でもおいしくなるから!」
ゼノ「まぁ……いただきます」
オヤカタ「これ毒じゃねえか!!」
ゼノ「解毒薬……」
メルル「うぅ……毒がぁ……」
ゼノ「気分悪くなっている場合か! 解毒薬は誰も持っていないんだな!? ダッシュで買ってくるしかないだろう!」
オヤカタ「悪いな……ゼノ……」




