乗り捨て御免
少しだけゲーム内で仮眠をとり、私はバイクのエンジンを吹かす。
最初に訪れた街では何も交換できなかった。人が多く、交換する暇がなかった。
「このまま次の街行ってもいいけど……どうする?」
「ふむ。体力も満腹度もそれなりにあるし探索しながら向かうのも手ではないだろうか」
「そうだね」
ポイントを稼げるのは二つ。
一つは魔物を倒すこと。多分、強さによってもらえるポイントが違う。
もう一つはフィールドに落ちているポイント還元アイテムを引き換えること。物やレアリティによってポイントが違い、また、これはポイントをすぐには交換することはできず、多分死ぬとロストするだろう。
「ポイント交換品でも拾いながら行くか、魔物を倒しながら行くか」
「リスクはどちらもあるだろうな」
「そう。それに……後ろに誰かがいるし」
私たちの後ろをついてきている輩がいる。
バギーか、バイクかはわからないが。
ゼノは後ろを振り返り、それを確認するとバギーのようだった。
バギーが私たちの後ろびっちりつけている。同じ速度しか出せないので距離が詰まらないが、速度を落とせば距離が縮まり、バイクが壊される可能性もなくはないだろう。
止まらせないために後ろをつけてるのか、それとも最初から私たちを攻撃するつもりなのか。どちらにせよ……。
「じゅんぺー! バギーの上に何かがつけられている! 機関銃のようなものが!」
「攻撃するつもりかよ! こりゃ撃たれるな」
「また林の中に突っ込むか!?」
「いや、ここは多分無理だ! サイドカーつけてて通れる隙間がない! 木があまりにも密集しすぎている!」
すると、機関銃が放たれる音が聞こえた。
私は照準が定まらないように蛇行して走る。
「当たらないように祈れ! それしかない!」
「本当に無法がすぎるこのレースは。本当にルールを考えたのか?」
「こういうもんなんだろ! このレースは最低限のルールしかないのはわかってるし、こうやって他人のバイクを壊そうとしたり他人を殺すのもアリなルールにして楽しんでるんじゃないかな! 性格悪いけど好きだぜそういうアウトロー!」
どう切り抜けたものか。
減速して横を勢いよくすり抜けるしかないか? いや、横付けされて突進されたら終わる。攻める側のあっちには猶予がある。
このまま次の街に向かうのもリスキーだ。そこまで当たらないという保証はない。
「しょうがない、バイク捨てる」
「正気か!?」
「逃げ場がない。バイクは少々手痛いが交換するしかないだろうね」
「次の街まで走っていけと?」
「いや、そういうわけでもない」
私に考えがあるといってバイクを乗り捨てる。
バギーは私たちが乗り捨てたバイクを轢き、バイクが壊れたのだった。私はゼノを抱えて鋼水の糸を放ちバギーにつける。
「っしゃ!」
「なるほど……。連れて行ってもらおう作戦か」
「当たらない位置までばれないようにこの糸を手繰ろう」
今は地面に引きずられる形になっている。
ちょっとだけ痛いが、自分でやっているということでダメージはないようだ。私たちは急いで鋼水の糸を手繰り寄せる。
そして、バギーの後ろについた。
「バギーもきっと頑丈というのはあるけど、壊れる代物だと思う」
「ぶっ壊すのか?」
「そりゃ私たちがやられてるのにこいつらがやられないのは不公平じゃん」
「乗った。壊そうか」
お互い、乗り物捨てていこうぜ!
私は双剣を構えた。




