スタート時刻です!
イベントの詳しい内容はわからない。
ただ、エンジニア役とクルー役で役割が変わるんだろうなとは思う。エンジニア役がいるということは何か機械を扱うということだ。
それが何なのかはわからないが……。
と、考えているとあっという間に日曜日を迎えたのだった。
10月23日の日曜日。私は朝早くにログインすると、なんだか違う世界にいた。パルツェには悪いんだけど、魔素リンを探すのは少し遅くなると告げて、一週間東の国に滞在していた。
パルツェはわかったっていって、なにやらどこかに行っていたが……。まぁ、気長に待ってくれる子でよかったよ。
「さて、あとはゼノを待つだけか」
イベントに参加申し込みした人がちらほらログインし始める。
開催時刻は朝の8時。今現在7時45分。8時までにペアの人がログインしないとはじかれる仕組みになっているようで、このレースはあくまで二人一組だということが改めてわからせられる。
なので早く来てほしいんだけど……。
少し時間がたち、そろそろイベント開始時刻の8時が迫ってくる。
「まだか?」
今現在7時55分。ものすごく不安になってきた。
約束を忘れない男だろうとは信じているが……。配信を開始しているし来なかったら放送事故は免れないんだが?
すると、誰かがログインしてきた。ゼノだ。
「悪いね。遅くなったよ」
「遅いよ。はらはらしたなぁ」
「原稿が遅くなって昨日は遅くなったのさ。間に合ってよかったな」
本当にね。
そして、時刻はとうとう8時を迎えた。8時を迎えると、私たちの前に大きなモニターが現れ、そこにイベント主催者であろう男の人が映り込む。
奇抜なサングラスをかけて、陽気な人。
『ようこそ! イベント用特別ワールドへ! 今回はイベントを開催するぞ! イベント内容は前日に通達した通り! 詳しいルールは全員に物を配ってから話すが……。とりあえず、二つ! 選択肢がある。レースに使う乗り物だ。どちらか選べ!』
乗り物?
私たちの目の前にウインドウが表示され、二択を迫られた。
リーダー登録は私にしてあるため私が選ぶようだ。
「バギーとバイク……。へぇ。これでレースするのか」
「どっちにするんだ?」
「まって、長所と短所が書いてあるから……」
私は長所と短所を読んでみる。
「バギーは武器を搭載することで乗ったままモンスターに攻撃可能で荒地にも強いが、小回りがそこまで聞かないので細い道の走行は不利……。バイクは機動力があり、ショートカットも狙えて専用パーツを手に入れれば速度アップが狙えるが、モンスターに対しては下りないと攻撃ができなく、荒地がきついって感じらしい」
「ふむ……。どれも一長一短だな。ここはどちらでも構わないだろう。じゅんぺーが選ぶといい」
「私が? うーん。じゃ、バイクかな」
バイクを選択する。
すると、私たちの目の前にサイドカーが付いたバイクが現れた。
『全員選んだようだな! では、次だ! この世界のマップを渡す! 今、お前らがいる地点がスタート地点! そして、この世界はぐるっとドーナツ状になっているので、同じ場所にぐるっと戻ってきたら一着! ここがスタート地点でありゴール地点でもあるのだよ!』
「ほんとだ。ドーナツ状だ」
『だがしかし、一着は一着とは限らない! このイベントの勝利条件はポイントだ。三着まではレースボーナスが付くが……。それだけで勝てるわけがない。ポイントに変換できるものをあちこちにばらまいている! そのポイントで乗り物のパーツを購入できるのさ。ポイントを集めてうまく活用した人が勝つ!』
ふふん、なるほど。
『あの、クルー役とエンジニア役の説明を忘れてます……』
スタッフの声が入った。
『あ、すまない。クルー役とエンジニア役の説明をしよう! まぁ、簡単だがね。エンジニア役はパーツを取り付けることができる役割さ。エンジニア役でないとパーツは取り付けられない。クルー役は運転する人。クルー役でないと運転は不可能。それぞれの役割を全うせよ!』
おおむね理解できた。
そして、注意事項などがあり、レーススタートが間近になる。私はバイクにまたがった。
「僕がサイドカーだな」
「エンジニア役だからね。ま、運転はこのじゅんぺーちゃんに任せておきんしゃい」
「期待しているよ」
私はエンジンをかける。
どうやらエンジンにも限りはあるらしく、エンジンも尽きることがあるみたいだ。長持ちはしそうだが、それでも一周する分には全然足りないだろう。
エンジンもポイントで買うのかな。
『では! 皆乗り込んだようだ! ただいまより、スチームパンクレース、スタート!』
スタートが切られ、私は一気に速度を上げた。




