空を望む馬鹿
舞台はゲーム内に戻る。
私は天使のお題を一つクリアしたんだっけか。それで、次の目標は同じ古代種のサーベルタイガーという魔物。
だがしかし、まだこのクエストは受けられないようで、もう少し時間がたってからと天使に言われた。
「受けられるようになるのは次のアプデからかな」
天使曰く「まだその時じゃない」
「わわ、危ない!」
私が歩いていると、上空から何か鉄の塊が落ちてきたのだった。
さすがにこれはかわすしかない! 私は思いっきりよけると、土ぼこりをあげて、地面に何かが突き刺さる。
それは無骨な飛行機だった。中に人が乗っており、頭を打ったようで頭を押さえていててと呟いている。
「すいません! ケガはないですか!」
「ないけど……なにこれ」
「飛行機です!」
「飛行機……」
「興味ありますか!?」
と、皮手袋を履いた手で私の手をつかんでくる。
頭には飛行帽をつけて、ゴーグルを外していた。
「あるっちゃあるけど……この世界に飛行機なんてできるわけが……」
「できますとも! まだ試作段階だけど空を飛べる段階までは行けたんだ! もっともっと改良していくんだ! 飛行機に興味があるなら私の工房に行ってはなそーよ! すぐそこなんだ!」
と、言われてついていくと森の中に小屋があり、滑走路のようなものもあった。
飛行機をしまっておく場所であろう小屋もある。私は女の子の家に招かれ、お茶を出された。
「初めまして! 私はここで飛行機を作ってるパルツェ! さっきはごめんね! 試作段階の飛行機だからあまり長距離とべなくて!」
「う、うん」
「飛行機はね、すごいんだ! 人間でも空を飛べるの! ばびゅーんって!」
「まぁ、たしかに」
現実の飛行機もまだどうやって飛んでいるか理論が分かっていないが飛んでいる。
鳥を見ていると空って素晴らしいと思えたんだろうか。
だがしかしこの世界に飛行機って……。
いや、だがしかし……機関車がある以上、飛行機も作ろうとしている人がいてもおかしくはないのか。蒸気機関は産業革命の始まりだからな。
「飛行機ってすごいね」
「でしょー! でもね、みんな私を笑うんだ! そんなのできるわけがないって! でね、私はね、その人たちを見返してやるの! 人間だって空を飛べるんだぞって!」
「見返してやりたい……ね。そもそもなんで飛行機を作ろうと?」
「王都に機関車ってあるでしょ?」
「あるね」
「あれ、作ったの私の師匠! 師匠が機関車作ったから今度は私が世界的発明をしてやるー!って思ってね! 陸の次は海……って思ったけど船はあるしなって思って、次は空! 人類は空を攻略してみないとね! 空にはいろんな伝説があるんだ! 空からカエルが降ってきたとか、そういう現象もある! 解明するためには空に行かなければならない!」
熱く空について語るパルツェ。
人類は空を攻略しないといけない、か。未開の地を切り開いていったのが人類だ。ロマンと、夢を追い求めるのも人類だ。
夢やロマンを追うバカはいつの時代にも、どこの世界にもいるものだな。
「そうだね。じゃあ、私も飛行機作成手伝いたいな」
「ほんと!? 助かるよー!」
《ワールドクエスト:人類の夢 を受注しました》
これもワールドクエストなんですか?




