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世界最優秀民族が異世界にやってきました  作者: mk-3
第一部 世界最優秀民族が異世界にやってきました
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戦闘後の生質問

「す、すげえよ! 道彦!」


 遠藤は感嘆の悲鳴を上げた。

 動画のカウンターは100万回を軽く超えていた。

 一時間以上前から遠藤の携帯は鳴りっぱなしである。

 遠藤は道彦の動画に関与していることを自ら告白した。

 顔と名前を出し、連絡先も公開した。

 すると世界中のメディアがこぞって遠藤にインタビューをしてきたのだ。

 アメリカ、欧州、中東まで。

 遠藤は世界中のメディアから注目の的だった。

 ちょっとした芸能人気取りである。

 だがこの遠藤、そこで調子に乗るような男ではない。

 あくまで今回の主役は道彦で、自分自身は道彦のバックヤードを支える相棒であると正しく理解していた。

 それを理解しているからこそ遠藤は道彦のブランドイメージの構築を考えていた。


 もう夜中だというのに学校からも事情聴取の電話が入ったが無視である。

 止めろと言うのだろう。

 どうせ彼らには道彦を助けることなんて頭にないだろう。

 そんな連中に従う義理はない。

 親にも友人を救いたいから無視しろと言ってある。


「道彦……世界はお前のことを知りたがってるぜ」


 30分後に中東のメディアのインタビューがある。

 時間も人手も金も足りない。

 それが遠藤の悩みだった。

 ここで遠藤はある決断をする。

 遠藤はスマホからメッセージを一斉送信する。

 知り合い全員に応援を頼んだのだ。

 するとすぐに電話がかかってきた。

 着信通知には『三井』と表示されている。


「三井。夜中に悪い」


「いやいいってことよ。遠藤。手伝って欲しいって道彦の件か?」


「うん。もう俺だけじゃ人手が足りないんだ。人手だけじゃない。金も技術もなにもかもないんだ」


「なるほど。他の連中は?」


「まだ誰も。お前が一番だ」


「そうか。そうだな。俺に考えがある。任せてくれるか?」


「ありがとう! 頼む!」


 この三十分後、ネット上であるプロジェクトが注目される。

 「同級生の命を助ける支援をお願いします!」

 それは資金提供を呼びかけるサイトのプロジェクトだった。

 いわゆるクラウドファンディングである。

 一定以上の資金提供で特典を与えるのが特徴である。

 今回は道彦との生の音声チャット権を付与することに決めた。

 生放送中の道彦には許可を取っていないが道彦には断わる権利はない。

 プロジェクトの立ち上げと同時に信じられない額の振り込みが行われていく。

 そして同時刻、遠藤の携帯電話が着信を知らせた。

 遠藤はまたインタビューかよと辟易しながら通話ボタンを押す。


「え、機材を貸してくれる? 本当ですか!」


 そして遠藤もまた運命という名の大波に翻弄されることになるのであった。



 道彦はまたヒールを受けると村を捜索した。

 大人10人。

 子供10人。

 合せて20人ほどがまだ生きていた。

 楽しく殺害するために大事にとっておいたのだろう。


「皆さん、エルフを救出しました」


 エレインが撮影するなか道彦は淡々と実況中継をしていた。

 兵士たちはまだ数人が意識を保っていた。

 村民たちは道彦に詰め寄った。


「か、家族の仇を討たせてくれ!」


 まずいことになった。

 道彦は思った。

 戦闘で人を殺すのとリンチは違う。

 道彦は戦場での殺人はしかたないと思っているが、戦闘が終わってからのリンチをどう扱えばいいかは判断できなかった。


「皆さん、村民の皆さんは報復を望んでいます」


 道彦はあくまで冷静に言った。


「普通、盗賊はどうやって処分するんですか?」


 わざと道彦は兵士を『盗賊』と言った。

 こんなヤツらを兵士と呼びたくない。

 声にこそ出さないが道彦は嫌悪感でいっぱいだった。


「盗みは縛り首だ。人が死ねば杭打ちの刑だ」


「わかりました。現地の法に従いましょう。エレイン、兵士を引き渡して」


 道彦はアッサリと兵士を引き渡した。

 だが一言添えた。


「ちゃんと裁判を開いてやってください」


「勇者様のご指示とあれば従いましょう」


 道彦は簡易の村営裁判を中継すると刑の執行を撮影するのは止めた。

 あまり美しいものではない。

 それに村民を蛮族とみなされたら面倒だと思ったのだ。

 代わりに世界に対して自己紹介をすることにした。


「鈴木道彦です。高一です。部屋にいたら突然この世界に呼び出されました。韓国軍に追い回されたあげく殺されかけたところを彼女たちに保護されました」


 コメント欄には道彦への質問であふれかえっていた。

 道彦はそれに丁寧に答えていく。

 最初はなにげない質問から始まった。


 Q.彼女はいるの?


「彼女はいません。女子と話す機会も少ないです……」


 自分で言っておきながら気分が落ち込む。

 このまま童貞で死んでしまうのだろうか……

 それを考えると空恐ろしかった。

 道彦はそれを正直に言った。


「童貞のまま殺されるかと思うと……なんと言うか怖いです……」


 少し場が湿っぽくなった。

「生きろ」

「どんまい」

「頼むから死ぬな!」

 コメントも妙な慰めであふれた。



 Q.平和的に解決はできなかったんですか?


「言葉も通じなければ姿を見たら殺そうとする相手にどうやって平和的解決をすれいいのでしょう」


 これはほとんどのコメントが同調した。

 彼らは全てを見たのだ。

 野蛮だったのは韓国軍の方だ。

 話し合いで解決するはずがない。



 Q.これからどうしたいですか?


「家に帰りたいです。でもその前に僕は殺されるでしょう」


 このとき、すでに道彦の動画は各言語に翻訳されて世界中に配信されていた。

 この「帰りたいです」は世界中に配信され、道彦のこの発言は事件を象徴するものになった。



 だがここで空気が変わる。

次回マリファナ回

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