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世界最優秀民族が異世界にやってきました  作者: mk-3
第一部 世界最優秀民族が異世界にやってきました
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救出……だが……

 道彦は村に侵入した。

 村は静まりかえっている。

 住民の相当数が殺されたのだろう。

 そこらじゅうに血痕が散らばっていた。

 道彦は息を止めて耳を澄ました。

 虫の鳴く声。

 人を焼く焚火の音。

 それに混じりうめく声が聞こえた。

 高い声。

 それは小さな子供か女性の声に違いなかった。


「エレインは撮影。他は援護。勝率は低い……死んだらごめん」


 道彦は小声でささやいた。

 エレインは首を振る。


「私は道彦様が何をなされようとしているのかわかりません。ですが道彦様と最後までご一緒致します」


 それが勇者を召喚したという使命感から来るものだと道彦はわかっていた。

 まだ出会ってから数時間しか経っていない色恋もクソもない。

 道彦の方も美しいエルフに恋心を抱くほどの余裕はなかった。

 道彦は音を立てないようになるべく静かに声の方に近寄った。

 あまりの緊張に冷や汗と手汗が止まらない。

 声は小屋の一つから聞こえてきた。


「助けて! お母さあああああああああああんッ!」


 それは幼い少女の悲鳴だった。


「少女と思われる声が響いています。今から救助したいと思います」


 道彦はカメラに向かい小さく言った。

 カメラの向こうの視聴者たちもゴクリとつばを飲み込んだ。

 道彦は「自分が死ぬのを面白おかしく見てるに違いない」と生放送をシニカルに捉えていたが、実際は多数の視聴者が道彦に共感し道彦の生還を祈っていた。

 サイバー犯罪の通報窓口であるインターネット・ホットラインセンターには通報が殺到、サーバーがダウンしていた。

 各地の警察署にも通報が殺到。

 夜中にもかかわらず警察庁が対策会議を開いていた。

 また政府も同様だった。

 日本国内閣総理大臣である芥川重三も夜中だというのに閣僚を呼び出し対策を練っていた。


「韓国との電話会談はまだでしょうか?」


 芥川が質問をした。


「総理。その件ですが韓国が拒否しています」


「そうですか」


 時間稼ぎをして高校生を殺害しようとしているのか、それとも単に情報を得ていないのか。

 おそらく後者だろう。

 芥川はそう判断した。

 彼らが計画的に行動するのは珍しい。

 常に彼らは秩序より感情を優先させる。

 この高校生は韓国人のメンツを潰してしまった。

 実利を無視してでもメンツを大事にする韓国人の民族性から考えればどんな手を使っても殺害するはずだ。

 居場所がわかれば日本の右翼が云々と虚実織り交ぜながら大騒ぎするはずだ。

 つまりまだ彼らもなにもわかっていないのだ。

 芥川はやれやれとため息をついた。


「とりあえずこの鈴木くんの家に護衛をつけてください。それと韓国側は被害者数を盛ってくるはずです。おそらく異世界で自分たちが殺した人たちまで鈴木くんが殺したことにするでしょう。それに赤日新聞をはじめとするメディアが鈴木くんを叩くでしょう。人権を守ってあげてください」


 いま芥川にできるのはそこまでだった。

 芥川は理解していた。

 鈴木道彦はこれから話題の中心になる。

 そして彼の安否で政権が揺らぎかねないことを。



 道彦は小屋にそっと近づくと静かにドアを開けた。

 兵士から奪った懐中電灯で中を照らす。

 涙で顔をくしゃくしゃにした少女と目が合った。

 この世界の住民の寿命はわからないが人間であったら7、8歳だろう。

 酷いことをされたのか衣服は破られ、顔は腫れあがって黒くなっていた。

 床には歯が落ちている。

 気分の悪いことに爪も落ちている。

 道彦は心の底から嫌悪感を抱いた。

 少女は縛られていた。

 縛られたロープには電子部品が取り付けられている。

 道彦は驚愕した。


「爆弾だ!」


 それがなんなのかは明らかだった。

 道彦は道彦の後ろで少女を撮影をしていたエレインを突き飛ばした。

 次の瞬間光が走った。

 僅かに遅れて爆発。

 逃げ遅れた道彦の脇腹に何かが突き刺ささり炎は道彦の体を焼いた。

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