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【詩集】果てしない扉  作者: につき
過ぎるままに
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シロツメクサ

シロツメクサの花に

手をのばす

小さな

わたしの娘の

写真


赤いワンピースを

着て

花だけを

見て


夏の終わりが

近いから

光も

曇り気味


あのころの

わたしたちは

今よりも

もう少し

幸せで

そして

暗かった




ないしょの

黒い猫を

見つかり

アパートの二階を

追われた


そして借りた

古い小さな家の

小さな庭に

紫式部と葡萄と芋を

植えた


葡萄は

ほそぼそとのび

芋は

小さな実りになって

紫式部は

思いがけず生い茂った




事情があって

実家へ移り


庭の糸杉を全部

切り倒し

がらくたと

思い出を捨てた


丼は

全て割れ

雨は

漏ってくる


それでも

何かが明るい


行き止まりの

開き直り

になっている


南東の角の

切り残した山茶花は

今年の冬も

鮮やかに咲いた


日陰にある

小さな水溜りのような

池に植わっている

カラーは


初夏に

青々とした大きな葉を

真っ直ぐに伸ばして

純白の花を咲かせるだろう


そして

梅雨になれば

母の菩提寺を

驟雨が包み


ぱったりと

雨が上がれば


きらきらと

紫陽花たちは

輝きながら


やがてくる

暑い夏を

どう迎えるか

すこし俯きながら

考えているだろう

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