表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【詩集】果てしない扉  作者: につき
穏やかな残酷
84/100

春の薫り

微妙なタッチで変わってしまう

演奏のように

微細な表現で異なってしまう

詩の趣き


寒風の風上に向かって

あの荘厳な樹氷の伸びるように

厳しき時代の風上に向かって

峻険な精神は蔓を伸ばすのか


いや 決して暗闇を求めているのではなくて

暗闇から見える より明るい光を求めている


この辛い時代にただの明るい言葉など

薄くなるだけかも知れないけれど


たとえ暗い色に思えても

染物の藍の甕から引き揚げた一瞬

緩めた先から染まっていくエメラルドグリーン

やがて縹色に変わっていく間に


希望はある

哀しみと喜びの間

まったく異なる事象の訪れるあわいに

予感する

ぼんやりとした温かさ


雲の遥かな山頂より

あたりは雲に覆われ何も見えない

静かな悲しみに打ち震え

それもまた楽しく思う


錦秋の山野を見下ろして

どこまでも煌びやかに紅葉が広がる

絢爛豪華な喜びに言葉を失い

あまりのことに哀しみすら覚える


神々の領域においては

哀しみも楽しく

喜びもまた憂いを含む


つまりは生きていること

胸を突く 生きているということ


その哀しみと喜びの同居した

胸を打つ名の無い感情

それこそが

闇と光のあわい

黄昏の

東雲時の

光の匂いに含まれる

春の薫り


希望と絶望の混在した

蒸せるような

命の芽吹きの薫り

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ