表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《サイバーサムライで御座候》辺境惑星でスローライフ…出来るかな?  作者: 稲村某(@inamurabow)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/17

⑭遊んでやるぜ!



 タマキはドルボイの店を出ると、夕闇に包まれた歓楽街の通りを抜けて少し歩く。周辺には観光客目当ての若干いかがわしい店も点在しているが、そうした店が極端な悪さをしている訳でないのは明白である。要は街全体が一種のテーマパークと化し、そうした雰囲気を味わいたい観光客に一定水準の娯楽を提供しているようだ。



 「……ま、閉ざされた島の歓楽街だからねぇ。下手に違法行為やっても直ぐ捕まるわな」


 ふんふんと頷きながらタマキは店を眺め、出入りする客の流れを掻き分けながら進む。だが、一見するとタマキは無造作に歩を進めているようだが、実際は前後左右の空間を把握しながら常に警戒を怠っていない。長年の戦場暮らしで染み付いたクセは、決して抜けはしないのだ。


 そうして観光客の中を歩いていく内、次第に周囲の人数が少なくなり始める。別に建物が途切れている場所ではないのだが、店に看板が掲げられていなかったり照明が点けられていない店ばかりが目立つ。だが、タマキは躊躇なく進んでいく。


 「……姐さん、ここらの者じゃねぇな」


 不意にそう声を掛けられ、タマキはピンと耳を立てる。相手は大きな店の入り口に置かれた椅子に腰掛けたまま、腕を組んでじっと彼女を見詰めながら話しかけたのだ。


 「だったら何だってんだい。ここいらじゃ観光客相手にいちいちそう聞くんか?」

 「……観光客がこんな場所に来るか。判るだろ、堅気のもんが彷徨いて良い所じゃねえってよ」

 「へぇ、こいつを提げてても堅気かどうか判んないあんたの目は節穴だな?」


 真っ黒な外装の強化型サイボーグの男に向かってタマキがミフネを掲げると、相手は溜め息を吐く仕草を見せながら呟く。


 「……観光客でもな、怪しい雰囲気の街中をサムライ気分が味わいたくて模造刀提げながら歩く連中も居るぜ」

 「じゃあ、試してみるかい?」


 タマキがミフネの鞘を撫でながらそう答えると、相手はサーボモーターの音を小さく鳴らしながら椅子から立ち上がる。だが、ミフネの鞘に施された螺鈿細工(アワビの殻を薄く研いで貼り付けた飾り)が通りの照明を反射してキラリと輝いた瞬間、何かを悟ったように呟いた。


 「……おいおい、冗談だろ……? イミテーションじゃない。それじゃあ……」

 「……はぁ? こっちはやる気満々だぞ?」

 「例えイミテーションでも、そんなもん提げて歩き回る奴は正気じゃない。【白毛のタマキ】を騙る観光客が居るものか、全く……肝が冷えたぜ」


 サイボーグの男はそうタマキに告げると椅子に戻り、彼女に聞こえるよう声に出して報告する。


 「……ジョークじゃないぜ、タマキの姐御が来た。俺は死にたくない」


 手短に誰かに告げると彼は後は知らんと言いたげに両手を挙げた。


 「ま、あんたがそう言うなら好きにさせてもらうさ。で、()()()は今どこにいるんだい」

 「……そう言うと思ったよ。ベルティの姐御はこの先の【ニューキャッスル】ってクラブの二階に居る。但し、客人として来てるのは理解してくれ」

 「へぇ、そうかい。あんたらが何企んでるのか知らんが、私ゃいつでも通常営業が自慢だぜ?」

 「……勘弁してくれ」


 タマキの返答でサイボーグの男が肩を落とす様子に苦笑いしつつ、彼女は薄暗い通りを真っ直ぐ進んで行く。すると説明通りに突き当たりの建物が見えてくるが、明らかに違法な戦闘用外装で義体化したマフィア構成員達が店の入り口を守るように立っている。


 「……おい、そこで止まれ」

 「ここから先は観光客向けじゃない、さっさと戻れ」


 闇の中から現れたタマキに、そう告げながら構成員達は本物の短距離船内銃(ロー・インパクトガン)を向けて威嚇する。


 「やれやれ、そんな物騒なもん向けるもんじゃないぜ。初めて会う相手にゃキチンと挨拶しろって教わらなかったかい?」

 「……警告はした、恨むな」


 タマキのぼやきに構成員達が一斉に構え、五丁の銃口が彼女に向けられる。航宙船内で射撃しても外殻まで破壊しないよう、着弾と同時に破裂して貫通性を無くした弾丸を発射する小型電磁銃は星間マフィア御用達である。多弾数を誇るその銃のトリガーを引けば、一瞬でケリがつく……筈だった。


 「……遅えぇーんだよ、あんたら」


 いつの間にかミフネを抜いていたタマキがそう告げると、前衛に当たる三人の指先がトリガーごと切断され、土剥き出しの地面にポロリと落ちる。


 「くそっ、攪乱操作波(ジャマー)か!?」

 「おい、早く退け!」


 慌てながら残りの二人がタマキを狙うが、前の三人が邪魔になり彼女の動きを追い切れない。あっと言う間に詰め寄られた二人はミフネで銃ごと手首から先を斬り落とされ、成す術も無い。


 「やれやれ、遅くてアクビが出ちまうよぉ……あんたらを義体化した闇医者にクレーム入れるべきだねぇ」


 鞘鳴りと共にミフネを納めながらタマキはそう告げると、傍らにぶら下がった看板の【ニューキャッスル】、そして【一見さんお断り】の文字を鼻先で笑いながら店の中に入る。そして店内の到る所に座っていたマフィア構成員達を一瞥し、


 「……さーて、ベルティと遊ぶ前に肩慣らしといこうじゃないか! 邪魔する奴は容赦しねぇからな!!」


 景気付けの一声を上げながらミフネを抜いた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ