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《サイバーサムライで御座候》辺境惑星でスローライフ…出来るかな?  作者: 稲村某(@inamurabow)


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⑬たまにゃ昔話も良いな!



 店主の差し出したグラスを持ち、タマキが一口含む。ヴォトカの強い酒精が舌を刺激するが、ホワイトシロップの甘さが直ぐ割って入り緩和する。そしてレモン果汁の酸味が全てを丸く穏やかにし、最後に果皮のほろ苦さを残しながら一つに纏めて消えていった。


 「ふむ、こりゃ悪くないな!」

 「……そりゃあどうも。だが、どうしてあんた、こんなドの付く辺境くんだりまで……」


 カクテルをそう褒めながら二口目を味わう彼女に店主がそう尋ねると、タマキはグラスの縁を撫でてから答える。


 「あー、何か心配事があるなら無用ってもんよ。私ゃ別に元兵隊のあんたがここに居るって知ってたから来た訳じゃなくて、たまたま寄っただけさ」

 「そうかい、なら別に良いんだが……偶然にしちゃ、随分とあれなもんだからな」

 「……偶然って、何のことだい?」


 店主の言葉にタマキが首をかしげると、相手は彼女が本当に知らないのかと呟きながら口を開いた。



 「……俺は退役してから色んな星を転々とし、当時は今より遥かに辺鄙な片田舎だったここに店を出したんだ」


 自分はドルボイだと名乗った店主はそう言うと、ヴォトカを一口含む。


 「……まあ、正直に言えば蓄えは十分有ったから何処でも構わなかったんだが、どうせならとことん田舎の方が良かった訳さ」


 お互い戦争加担者だと知ってか、ドルボイは武勇伝など一切話さず淡々と来歴をそう説明してから唐突に話題を変える。


 「ところであんた、この星の所属星系は何処だか知ってるかい」

 「いや、知らないねぇ」

 「……ヴァルトリア星系、って言えば聞いた事あるだろ」


 タマキはその名を聞き、耳が動くのを堪える。ついこの間、タマキの乗っていた帝国所属駆逐艦と一戦交えた敵艦の船籍が確かそうだった筈。


 「ヴァルトリアは帝国の庇護を離れる為、今まで手を付けていなかった惑星の資産化を急いで始めた訳だ」


 彼女はまさか落ちた先の田舎の星がそうだと知らぬまま、その渦中の場所でのほほんと暮らしていた事になる。


 「でもよ、今のままでも稼ぎ自体はあったんじゃねえか?」 

 「……たかが観光資源さ、美しき環境を謳った所で大した稼ぎにゃならん。それじゃ、この世の中で一番稼げるのは何だと思う?」

 「さあねぇ、私ゃ商人じゃねぇからそこらはうといなぁ」

 「……余所じゃ扱ってねぇもんに決まってるさ。例えば、禁輸措置商品や密売デジタルドラッグ……とかな」

 「ふん、そんなもんかい」


 急に話がキナ臭くなり、タマキは眉をひそめる。確かに帝国領土内では孤児の売買や脳に多大な障害を残すデジタルドラッグは規制の対象だが、そうした物の売買は市場が存在して初めて価値が生まれる。例えば昨日まで真っ当な商売をしていた店が、いきなり宗旨変えをした所で裏取引が目当ての客が来るとは限らないのだ。


 「今のヴァルトリア星系で、勿論そうした販売網は有りゃしない。だが、水面下で特区扱いされてきた星系と繋がって商売を始めたとしたら……どんなもんだかな」


 帝国領土内で特区扱いを受けている星系は、少なからず有る。星単位の国営軍事会社【境界無き(ボーダレス・)武器運搬船(ウェポンギャリィ)】等を擁したシワミティ星系や、多種多様な宗教を容認し精神的な拠り所として名高いホウライ星系はその一例だが、それらの星系国家とヴァルトリアを隔てる最大の枷は距離である。しかし、もしポータルポイントが新設されて亜空間移動が可能になれば……そうした繋がりが生まれる可能性は有る。


 「じゃあ、この田舎の星付近にポータルポイントが作られるのかい?」

 「現時点じゃ無理だな、新しいポータルポイントの設置は皇帝の承認がなきゃ叶えられん」


 ドルボイの返答にタマキはそりゃそうだと納得するが、しかしどうにも腑に落ちない。先ず、元軍人のバーの店主如きがどうして惑星単位の策謀を知り得るのか、そしてその知識は一体何処から仕入れたのか。


 「……あんた、私がタマキだと知ってて話してるのか?」

 「まあ、そんな所だ。それに俺が話してるのは只の噂話だし、バーで語る内容にいちいち信憑性を求めてないだろ」

 「まぁ、そりゃそーだな」


 タマキが肯定するとドルボイは再びヴォトカを啜り、ここからは噂話じゃないと前置きしてから話しだす。


 「……昨日の便で、この街に星間マフィアの偉いさんが着いたらしい。但し、何処に消えたかは俺も知らん」

 「星間マフィア、ねぇ……山程あるからなぁ」

 「この界隈だと一番近いのはヴァルトリア星系の星間マフィアだが、連中に太い販売網は無い。ヴァルトリア自体に星間マフィアが旨味を得られる程の経済力も無いし、田舎過ぎて星を渡るだけでも一大事だからな」

 「ふーむ、それならポータルポイントを使ってわざわざ遠くの星間マフィアがご出張って訳かい。ご苦労さんなこった」



 恒星間移動を行えるポータルポイントは、簡単に言えばワープ空間の出入り口である。だが、その構造や理論は帝国が一括管理し全ての機構は公開されていない。ただ、巨大なリングが設置されたポータル移動の中継地点として存在するだけである。無論、利用出来るのは帝国と交流を持った星系に限られているし帝国防衛軍が周辺できっちり管理している。しかし、星系に属していれば裏側で星間マフィアの重鎮として名を連ねていても利用は出来る。単純にポータルポイント破り等しなければ、誰でもそれなりの対価を払えば利用出来るのだ。



 「でだ、星間マフィアなんぞ別に珍しくはないが……昨日、船から降りてきた連中を偶然見かけたんだ。で、その中に居た奴の一人はあんたに似たネコ耳の強化人間だったぜ」


 ドルボイの言葉に耳を動かしたタマキは、三つのキーワードにピンとくる。星間マフィア、ネコ耳、強化人間。そんな奴は宇宙広しと云えどそう多く居ない。


 「……けっ、あの三毛ボケスカタン、まだ生きてやがったのかい」


 タマキは苦々しげに吐き捨てながらカクテルグラスを煽ると、手の甲に埋め込まれた生体チップを支払い端末に押し付けたが表示された額に目を見張る。


 「おい、ドルボイ! くそ高いなぁ!!」

 「カクテルってのはな、その場の雰囲気を嗜むもんさ。旨い奴を静かに()りたきゃいつでも来てくれ」

 「くそったれ、確かに美味かったけど次は安くしろよな!」


 眉一つ動かさずそう答える彼に、タマキは小さく舌打ちしながら外に出た。




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